(c)2017 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』リチャード・リンクレイターが紡ぐ、時間と空間の哲学とは
2018.12.18
ジュリー・デルピーとイーサン・ホーク
本作の物語は、ブダペストからパリまで続く列車の中から始まる。別々の席に座る二人の人物、ジュリー・デルピー演じるフランス人大学生セリーヌと、イーサン・ホーク演じるアメリカからの旅行者ジェシー。車内で静かに読書をしていたセリーヌは、近くの席のドイツ人夫婦が大声で激しくケンカを始めたので、そこを離れてジェシーの近くの席へと座る。
ジェシーは、この後劇中でも表現されるように、「ボッティチェリの描く天使」のような可愛らしい容姿のセリーヌに惹かれ、思わず彼女に話しかける。精悍なイメージのイーサン・ホークも、このときは少年のようなあどけなさを残していて、二人とも若いうちだけに存在するドリーミーな美しさを湛(たた)えている。時間を経たいま本作を観ると、せつない気分にとらわれてしまうかもしれないほどだ。ちなみに、2018年現在、ジュリー・デルピーとイーサン・ホークは映画俳優としてとどまり続け、デルピーは映画監督としてのデビューも果たしている。
『ビフォア・サンライズ 恋人までの距離』(c)2017 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
パリへと帰るつもりだったセリーヌに、ジェシーは「ウィーンで降りてみないか?」と持ちかける。かくして、フランスとアメリカ、海を越えた場所に住む二人は、オーストリアの古き音楽の都・ウィーンの街をさまよい、様々な話を交わしながら、翌朝までのロマンティックな時間を過ごすことになる。