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『ビフォア・サンセット』「永遠」を生み出し閉じ込めた、奇跡の映画

『ビフォア・サンセット』「永遠」を生み出し閉じ込めた、奇跡の映画

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「時間」とは“まやかし”ではないのか



 この不思議なラストシーンが意味するものは何なのだろうか。それは、じつは本作の冒頭部分、ジェシーが書店において次の作品の内容を訊かれたときの答えが、その謎を解き明かすヒントになっている。


 「僕が書きたいと思っているのは、ポップソングが一曲流れている間に起きる物語です。仕事や妻を持っていて不自由のない生活を送っているが、若い頃の理想を叶えられなかったことで物足りなさを味わっている男がテーブルについている。すると次の瞬間、5歳になる娘がテーブルの上に飛び乗ってポップソングに合わせて踊る。彼は突然16歳に戻った。高校時代に恋人が車のルーフに登って同じ曲で踊り出すところだ。これは娘の踊りで思い出した幻想ではなく、両者の瞬間は同時に存在し、一瞬にして彼の人生は一つに重なる。時間は“まやかし”だ。これは常に起きていることで、ある瞬間が別の瞬間も含んでいて、同時に存在している。まあ、こんな感じの話です。」



 リチャード・リンクレイター監督にとって本作の前の作品にあたる『ウェイキング・ライフ』(01)では、監督本人が出演して語り出すシーンに同じような話が出てくる。それによると、SF小説家フィリップ・K・ディックは、グノーシス主義に傾倒していたとき、このように考えていたという。じつは「時間」というものは、神が現れて善き人々を救済するのを阻止するために、悪魔が作り出した幻であるということ。そして我々は実際にはみんな紀元50年に存在していて、時間が過ぎて歴史が築かれるという夢を見せられているのだと。


 本作でジェシーが語る「次回作」とは、このような考えに触発されたリンクレイター監督による、時間における哲学的な思考であり、それはそのまま本作のことを指しているのである。



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