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『ビフォア・サンセット』「永遠」を生み出し閉じ込めた、奇跡の映画

(c)2017 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

『ビフォア・サンセット』「永遠」を生み出し閉じ込めた、奇跡の映画

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嘘や建て前の裏に隠された二人の本心



 パリの地理をよく知っているセリーヌは、ジェシーをカフェに案内して、ひとしきり話した後、マーケットの方向に行こうとするジェシーを制止して、高架を利用した「庭園の路(プロムナード・プロンテ)」に導く。つまりは素敵なデートコースである。


 そして、「もし、二人とも今夜死ぬとしたら、何の話をする?」と、水を向ける。9年経ったなりに恋愛巧者になっているセリーヌは、その場でできる限りの手練手管によって、ジェシーの気持ちを自分に向けようとしているように見える。セリーヌがより積極的に誘うのは、ある意味当然の流れなのかもしれない。勝手知ったるパリは彼女のテリトリーであり、既婚者であるジェシーは、たとえセリーヌに惹かれていたとしても、自分が妻を裏切るような男であるとセリーヌに思われたくない部分があるからだ。しかし、ジェシーは嬉々として彼女の誘いに応じていく。


 役柄だけではなく、二人を演じるジュリー・デルピーとイーサン・ホークもまた、9年の時間を経ている。俳優として成長している二人は表現力が増していて、その演技から、そのときのセリーヌとジェシーの言葉が嘘なのかどうなのか、心情がかなりのところまで分かるようになっている。


 別れの時間が迫ってくるとセリーヌは今までになく感情を表に出してジェシーを責める。あなたと過ごしたせいで、自分は恋する気持ちを全て使い果たし、他の人とは一生を捧げるような恋愛ができなくなったと。そしてジェシーもまた、自分にとって現在の結婚は間違っていて、あの9年前に自分の心は奪われたままなのだと告げる。つまり、二人は別れて9年経っても、あのときにお互いを求めた気持ちのままだというのである。



『ビフォア・サンセット』(c)2017 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.


 それらが真に本心から出た言葉なのかは分からないが、ジェシーが小説を書いてパリにやって来たこと、セリーヌもまた本を読んで会いに来たという事実と考えあわせると、少なくとも、そこに真実の気持ちが含まれていないとは考えにくい。しかし、本心らしき核心部分を伝え合った後も、また細かい嘘や駆け引きが展開されていくのが面白い。



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