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『ミッション:8ミニッツ』衝撃のループ・ワールドから浮かび上がる、ダンカン・ジョーンズの作家性 ※注!ネタバレ含みます。

(c)Photofest / Getty Images

『ミッション:8ミニッツ』衝撃のループ・ワールドから浮かび上がる、ダンカン・ジョーンズの作家性 ※注!ネタバレ含みます。

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一筋縄ではいかないストーリーに貫かれた普遍性



 さて、こうやってジェイク・ギレンホールの後押しを受けて監督就任が決まった『ミッション:8ミニッツ』。ベン・リプリーが手がけたこの脚本は07年ごろからハリウッド界隈をザワつかせていたものの、この突飛なアイディアを的確に映像化できる才能がなかなか現れないことが本作の不幸だった。


 何しろこのストーリーの複雑さときたら折り紙付きだ。舞台はシカゴ。中心部へ向かう通勤列車の中でふと目覚めた主人公は、自分が一体何者であるのかわからない。トイレの鏡を覗き込むと、そこにいるのは自分とは似ても似つかぬ別人。親しく話しかけてくる目の前の女性の態度にも困惑を隠せずにいる。


 その上、まったく事態が飲み込めぬうちに最初の8分間が経過すると、列車は唐突に大爆発に見舞われる。炎に包まれた主人公が次の瞬間に目覚めたのは、暗いコックピットの中。モニターに映し出された軍の制服姿の女性は彼に、シカゴ行きの通勤列車が爆破テロに見舞われたこと、犯人は次に街の中心部でテロを起こそうとしていることを告げる。



『ミッション:8ミニッツ』(c)Photofest / Getty Images


 彼が今しがた体験した8分間は、爆破によって死亡した人々の記憶をつなぎ合わせたプログラムの世界だという。軍は彼に、次なる爆破を食い止めるためにも、この8分間のプログラムに再度潜り込み、何らかの手がかりを掴むミッションを託すのだが・・・。


 本作の面白さは、8分間の世界に何度も送り込まれ、同じことの繰り返しを体験することにある。最初は困惑するばかりで全く要領をえなかった主人公も、次第にこの世界を掌握し、徐々に徐々に、犯人へとつながる手がかりを手繰り寄せていくことに。こういった「繰り返し」の中で確実な成長を遂げていくキャラクターの魅力、そして同じ線をなぞることで徐々に謎が解けていく流れも我々を興奮させてやまない一因だ。


 確かにプログラミングやテクノロジーといった小難しい部分もあるが、逆にテーマ性は非常に普遍的でわかりやすいし、プロットそのものも上映時間90分台に収まる極めてコンパクトなもの。


 となれば、これらを斬新なビジュアルで映像化できる才能は限られてくる。『月に囚われた男』で多くの関係者を魅了したばかりのダンカン・ジョーンズはまさに打ってつけの逸材だったわけだ。



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