2019.03.05
長回しという手法がもたらすものとは?
歴史を遡ればヒッチコックの『ロープ』(48)では、リアルタイムで進行する空気感を維持すべく、登場人物の背中などを大写しにしながら映像をつなげ、巧妙に全編がつながっているかのようなトリックを生み出した。
他にもざっと思いつく限りでは、『ザ・プレイヤー』(92)や『スネーク・アイズ』(98)、『トゥモロー・ワールド』(06)、『つぐない』(07)、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(14)など、中には映像を巧みに繋げているものもあれば、正真正銘のワンカットで撮りあげているものもある。
また、ドイツ映画『ヴィクトリア』(15)では140分間の長回しが話題を集め、また『サウルの息子』(15)では、ユダヤ人強制収容所の状況を長回しで描く手法が観客に衝撃を与えた。また昨年は『カメラを止めるな!』が大ヒットを記録したことで、これまでは知る人ぞ知る手法だった長回しが、ごく一般的なところにまで降りてきたような感も強い。
『サウルの息子』予告
これらはひとえに、進行中のあらゆる瞬間を切れ目なく撮ることで、ある種の生々しいまでの臨場感を生成するケースが多いように思う。ワンカットにおいて観客は、主人公と対等な立場となる。我々はその生々しさの中で、主人公やカメラと同時に、現在進行中のあらゆるものを目撃し、体験することになるのである。全ては一発勝負。それは同じことの繰り返しが効かない「一回性」の人生とも似ている。