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『新感染 ファイナル・エクスプレス』が暴き出す人間の業と社会情勢

『新感染 ファイナル・エクスプレス』が暴き出す人間の業と社会情勢


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    韓国アニメ界出身の異色監督、ヨン・サンホ



     『新感染 ファイナル・エクスプレス』は、高速鉄道の車内でゾンビが爆発的に増加するという設定の斬新さに注目されがちだ。確かにその迫力は圧倒的で、観客の心を鷲掴みにしていく。しかし、舞台設定を横におき、ヨン・サンホ監督が手掛けた韓国映画であるという背景に改めて注目すると、面白さはさらに深みを増す。


     ヨン監督とは何者なのだろうか。彼がこれまでに手掛けてきた作品を辿ることで探っていきたい。1978年、ソウルに生まれたヨン監督は、97年に初の短編アニメ『Megalomania of D』を発表。その後、数本の短編アニメーションを制作した後、2011年に初の長編アニメ『豚の王』を監督する。ヨン監督は本作で校内暴力を通じ、韓国社会におけるヒエラルキー問題が引き起こす悲劇を描いてみせた。また、同作は韓国の長編アニメとして初めてカンヌ映画祭に出品され、監督週間部門で上映されたことでも話題を呼んだ。


     続く長編アニメ2作目はエセ宗教を題材に村社会の闇に焦点を当てた『我は神なり』。ヨン監督曰く「価値の根拠を揺さぶる物語」だという。本作は第46回シッチェス・カタロニア国際ファンタスティック映画祭アニメーション部門で最優秀作品賞を受賞した。そして長編アニメ3作目となったのが、『ソウル・ステーション/パンデミック』。格差社会の底辺に生きる人々を主人公に『新感染』の前日譚となる物語を紡いでみせた。


     ヒエラルキー問題、信仰、格差社会など、一貫して社会に潜む闇を題材に選び、人間の業を描き続けているヨン監督。それは影響を受けたクリエイターとして、映画監督の今敏、漫画家の古谷実を挙げるところからも伺いしれる。また、『嘆きのピエタ』(キム・ギドク監督)や『渇き』(パク・チャヌク監督)、『母なる証明』(ポン・ジュノ監督)など、韓国映画は人間の業を描いた名作が多く、韓国映画が得意とする題材ともいえるだろう。


     『新感染』は、ヨン監督の実写長編映画デビュー作である。ヨン監督の作品は、そもそも写実的な絵柄であるほか、前述したように人間ドラマに焦点を当てていることもあるためか、製作時に演出の違いはそれほど感じなかったという。ただし、本作はブロックバスター映画であることが前提であったため、それまでの観客を選ぶ作品作りではなく、間口の広さを意識したと明かしている。



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