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『天国から来たチャンピオン』「映画がつく嘘」で陶酔させる
2019.04.14
『天国から来たチャンピオン』あらすじ
アメフト選手のジョーは天使のミスで、まだ寿命があるのに事故で天国に召されてしまった。彼は別人の肉体を借りて現世に戻ってくるのだが……『俺たちに明日はない』『レッズ』『ディック・トレーシー』の才人ウォーレン・ビーティが手がけたハートウォーミング・ファンタジーの最高傑作。観た後にほのぼのした感動と共に、“人間っていいなあ”と思えるはず。
Index
タイトルを巡る、オリジナル作品などのあれこれ
『天国から来たチャンピオン』。このタイトルは、インパクトは強いものの物語を考えるとやや違った印象だし、1979年の日本公開当時もちょっとした賛否両論があったことを今でも覚えている。
しかし、不慮の事故であの世に行った主人公が、天国の手前で「まだ死ぬのは早い」と地上に帰されるも、遅かれし、自分の肉体はすでに火葬され……という設定をここまで巧みに生かした作品は珍しく、アカデミー賞で作品賞を含めた9部門ノミネート(うち美術賞のみ受賞)、ゴールデングローブ賞ではミュージカル/コメディ部門の作品賞や主演男優賞受賞という高評価も納得できる。
とはいえ、アイデアはオリジナルではなく、1941年の映画『幽霊紐育を歩く』をモチーフにしている。同作もアカデミー賞7部門ノミネートという名作。さらにさかのぼれば、原作は1938年に書かれた戯曲である。そのタイトルは、『天国から来たチャンピオン』の原題『Heaven Can Wait』と同じで、『幽霊紐育を歩く』も原題は『Here Comes Mr. Jordan』だが、『Heaven Can Wait』と別名で呼ばれることもある。
『幽霊紐育を歩く』予告
ややこしいのが、1943年の、名匠エルンスト・ルビッチ監督の『天国は待ってくれる』で、原題がやはり『Heaven Can Wait』。死んだ主人公が閻魔大王に人生を語るという、ストーリーは無縁の作品(こちらも原案は戯曲)だが、同作もアカデミー賞で作品賞など3部門にノミネートされており、混同されることも多い。さらに『天国は待ってくれる』という、井ノ原快彦主演の2007年の日本映画もあるが、こちらも物語は別である。
そして『幽霊紐育を歩く』のキャラクターが再登場する続編的な作品が1947年、リタ・ヘイワース主演の『地上に降りた女神(Down to Earth)』。下界での自分の扱いに怒った女神が天界から降りてくるミュージカル映画だ。そして、この作品とほぼ同時期の1946年末のクリスマスに、大元であるオリジナル戯曲が「Wonderful Journey」というタイトルでようやくブロードウェイで上演されるも、わずか9回で幕を閉じている。