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レイフ・ファインズ監督作『ホワイト・クロウ 伝説のダンサー』を彩る3つの師弟関係

レイフ・ファインズ監督作『ホワイト・クロウ 伝説のダンサー』を彩る3つの師弟関係

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カメラの前と後ろでの師弟関係がもたらしたもの



 面白いことに『ホワイト・クロウ』はカメラの前と後ろで、二つの師弟関係を同期させながら展開していった。


 まだ何者でもなかったヌレエフを教師プーシキンは穏やかな口調で静かに導いた。それを演じるオレグとファインズの立場もまったく同じ。すなわち、演技者として素人同然のオレグを、ファインズは自分が培ってきた全てを注ぎ込みながら、ひとかどの俳優として育て上げていったわけである。


 それは世界中の俳優が羨ましがる贅沢な体験だったに違いない。ファインズはオレグに対しカメラの前でどう演じるべきか事細かく指示し、必要に応じてオレグを限界まで追い込むようなこともあったという。



 そういった撮影過程で、急に興味深いことが起きた。ふとファインズが指示していないレベルのことを、オレグが自分の頭で考えて表現するようになったのだという。


 その真意を問うと、彼は「この場面の彼ならばこう考え、こう振る舞うはずだ」と堂々と主張したのだという。果たして弟子の暴走なのか。それともごく素直な表現欲求の表れなのか。少なくともこれは、オレグの体内でヌレエフの存在が自発的にうごめき始めた瞬間だったに違いない。この時からファインズは細かく指示しすぎるのを控え、彼の自主性に任せる余地を広げていったのだとか。


 奇しくも映画の主人公ヌレエフも、物語が進むにつれ自我と表現欲求を思い切り解放させ、最終的には教師はおろか、ソ連という国家とも決別することとなる。映画の最初と最後に映し出されるプーシキンの表情からは「やがてこうなることは分かっていた」という諦念すら伝わってくるかのようだ。一方、映画監督としてのファインズに至っては、やがてオレグが自主的に考え、自らの意見や考えを主張しはじめる瞬間を、むしろ待ち望んでいたようにさえ思える節がある。



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