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フィクションとドキュメンタリーのハイブリッドで加速する『アメリカン・アニマルズ』の面白さとは

フィクションとドキュメンタリーのハイブリッドで加速する『アメリカン・アニマルズ』の面白さとは


様変わりしていく演出



 本作が面白いのは、ここで映画の雰囲気がガラリと変わっているところだ。平凡な学生の物語を描いていた序盤は、若者の無為な日常を、等身大の青春映画のような雰囲気で映し出していた。だが、犯罪計画を立て始めてからは、『レザボア・ドッグス』や『オーシャンズ11』(01)のような、犯罪映画風の演出に様変わりしてしまう。


 何者でもない若者たちが、知恵を絞って何かを成し遂げようとする姿に、観客もわくわくさせられることになる。このように、主人公たちの状況や心理に合わせ、作品の演出手法までもが引っ張られ、そこに観客が巻き込まれていくという趣向になっている。




 しかし、犯罪の素人ばかりの計画が、予想通り進んでいくわけがない。往年の犯罪映画では、首の後ろにチョップを喰らわせたり、薬品を染み込ませた布で鼻と口を覆えば、すぐに相手は昏倒してくれるが、現実にはそんなスマートに人は気を失ってくれない。このくらいは誰にでも分かりそうなものだが、彼らはアメリカの若者である。幼い頃からアメリカのジャンル映画に慣らされ、現実と映画の区別が一部ついてないところがあるのかもしれない。


 その意味で、ステレオタイプなアメリカ人の生態を、本作のイギリス人監督バート・レイトンが皮肉を込めて描いているという点で、「アメリカン・アニマルズ」というタイトルは洒脱な存在感をもつ。


 「サスペンスの神」と呼ばれる、イギリス出身のアルフレッド・ヒッチコック監督は、犯罪を描いたジャンル映画をハリウッドで無数に撮ってきたが、後期作品『引き裂かれたカーテン』(66)では、殺さなければならない相手がなかなか死んでくれず、いろいろな方法で殺そうとするという、皮肉なユーモアを込めた過激な場面があった。そこには、ヒッチコックによる自作への客観的な批評性が存在する。




 本作はそのような手法に近いアプローチによって、現実の被害者の悲惨な様子をしっかりと描写し、映画と現実の差異を際だたせる。そして犯罪計画にわくわくしていた観客に冷や水を浴びせかけるのだ。この試みによって、観客はいったん学生たちの心理に入り込み、彼らと同じように現実の苦さを味わうことになる。


 はじめから彼らを俯瞰した視点で演出していては、観客がこのプロセスを体験することはできない。とくに本作の学生たちに近い世代の観客は、このような没入できる部分があることで、自分の問題として事件を考えることができるだろう。そして、より上の世代は、ドキュメンタリー部分に登場する、過去を振り返る当人たちの視点で見ることもできる。



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