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『トゥルー・ロマンス』元ネタの宝庫!タランティーノ初期の傑作脚本を考察する

True Romance (c) 1993 Morgan Creek Productions, Inc. Package Design (c)2014 Morgan Creek Productions, Inc. and Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

『トゥルー・ロマンス』元ネタの宝庫!タランティーノ初期の傑作脚本を考察する

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元ネタその3:ニコラス・レイ監督『夜の人々』(注意!以下、映画の結末に触れています!)



 『トゥルー・ロマンス』を観ていると、若き日のミック・ジャガーが主演したサイケなロック映画『パフォーマンス/青春の罠』(1969)から、クラレンスの父親を妙演したデニス・ホッパーが主演した『悪魔のいけにえ2』(1986)まで様々なオマージュネタが見てとれる。若い男女の逃避行という点では前述の『地獄の逃避行』や『俺たちに明日はない』(1967)の変奏曲ともいえるだろう。


 そんな中でもあまり取り上げられないが、大きな影響を与えたのが1948年の青春犯罪映画『夜の人々』である。生涯に2冊の小説しか出版できなかった悲運の作家エドワード・アンダーソンの『Thieves Like Us』の映画化で、後にジェームズ・ディーン主演で『理由なき反抗』(1955)を撮るニコラス・レイの監督デビュー作である。


 主人公のボウイ(ファーリー・グレンジャー)は7年間刑務所に服役していた若者で、囚人仲間と脱獄し、強盗団の一員になる。しかし一味の一人の娘キーチ(キャシー・オドネル)と恋に落ち、衝動的に結婚して駆け落ち。堅気になって生きようと決意するも、犯罪仲間のしがらみに引き戻されてしまう物語だ。


 ボウイとキーチという男女の名前を聞いてロバート・アルトマン監督作『ボウイ&キーチ』(1973)を思い出した人は冴えている。『ボウイ&キーチ』もまた、同じエドワード・アンダーソンの小説の再映画化なのだ。


 『夜の人々』は『地獄の逃避行』と同様にタランティーノがお気に入りに挙げている映画であり、多くの点が『トゥルー・ロマンス』と共通している。最後には仲間に裏切られたボウイが射殺され、ボウイの子供を宿したキーチだけが生き残る。ハッピーエンディングに変更される前の、タランティーノが本当に望んだ『トゥルー・ロマンス』のオリジナル脚本のラストとまったく同じと言っていい。


 また、女性に対して奥手なボウイは「映画館で手を繋いで映画を観たい」とささやかな願いをキーチに語る。結局『夜の人々』の劇中では叶うことのない夢だが、『トゥルー・ロマンス』では映画館でクラレンスとアラバマが出会い、隣同士でカンフー映画三本立てを観る。『夜を生きる』を観た後では、タランティーノがボウイとキーチの果たされなかった願いを自分の作品で実現してやったようにも思えるのだ。


 “男と女の逃避行”というジャンルの最初期の名作であり、『トゥルー・ロマンス』の原型にもなった『夜の人々』。タランティーノがどんな映画に胸を焦がしながら『トゥルー・ロマンス』を書いたのかを知るためにも、ぜひ一度ご覧になっていただきたい。



文: 村山章

1971年生まれ。雑誌、新聞、映画サイトなどに記事を執筆。配信系作品のレビューサイト「ShortCuts」代表。



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『トゥルー・ロマンス ディレクターズカット版』

ブルーレイ ¥2,381+税/DVD ¥1,429 +税

ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント

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