エルトンには不満も多かった初の映画音楽『フレンズ』
『メロディ』と同様に、『フレンズ』のキャストも日本で愛され、とくにミシェル役のアニセー・アルビナは、その後しばらく映画雑誌の人気投票でも、『メロディ』のトレイシー・ハイドとランクを競い合っていた。フランス人のアニセーは母国よりも日本での人気が高く、1981年には、デザイナーの高田賢三が監督した日本映画『夢・夢のあと』に主演(残念ながら作品評価は最悪)。他の代表作は『フレンズ』の続編くらいで、2006年、53歳という短い生涯を終えた。
『ロケットマン』(c)2018 Paramount Pictures. All rights reserved.
その『フレンズ』のサウンドトラックを担当したのが、若き日のエルトン・ジョン。前年の1970年、「ユア・ソング」の大ヒットによって多忙を極めていた彼にとって、『フレンズ』は「やっつけ仕事」でもあり、自身のアルバムに入れる予定だった曲を回したりもした。映画に合わせた無理な注文もあったようで、エルトン本人は、この『フレンズ』を気に入っていなかったとされる。しかし、映画を観ると、エルトン・ジョン作曲、バーニー・トーピン作詞の曲が物語を加速し、美しく彩っていることがよくわかる。とても、やっつけ仕事とは思えない。
『ロケットマン』予告
タイトルの「フレンズ」はシングルとしてもヒットしただけあって、バーニーの歌詞とエルトンのメロディの最高の化学反応を感じられるし、ポールとミシェルが南仏のカマルグへ「逃亡」するシーンでの、「ミシェルの歌」と背景の自然との美しすぎるシンクロ。そして何度か流れ、「友達として始まった若い恋人たちはどうなるのか?」という歌詞で切なすぎるラストを演出する「四季はめぐり来る」……。
『フレンズ』MV
『フレンズ』はグラミー賞の映画・テレビサウンドトラック部門にノミネートされただけあって、エルトンの思惑をよそに、サウンドトラックの評価は高かったのである。
『フレンズ』には不満もあったエルトンが、再び映画のサウンドトラックに挑み、大成功を収めたのが『ライオン・キング』(94)だ。「愛を感じて」「サークル・オブ・ライフ」などの名曲を、作詞家ティム・ライスとのコンビで完成させ、彼とエルトンはアカデミー賞主題歌賞を受賞した。
「愛を感じて」
『ライオン・キング』は舞台ミュージカル化でも人気を博し、2019年には超実写版としてスクリーンに復活。エルトンの曲は受け継がれている。エルトンとティム・ライスのコンビは、ミュージカル「アイーダ」も手がけており、映画にしろ、舞台作品にしろ、物語を「奏でる」エルトン・ジョンの才能は誰もが認めるところである。