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『スイス・アーミー・マン』誰が作ったんだこんな映画!?大注目の新人監督ダニエルズとは?

『スイス・アーミー・マン』誰が作ったんだこんな映画!?大注目の新人監督ダニエルズとは?


手作りのギミック映像から生み出されるノスタルジーとカタルシス



 まずは技術的な話から。“ダニエルズ”が得意とするのは、コンピューター合成も多いのに、不思議とオーガニックな手作り感のあるギミック映像。これらを支えているのは「モーション・トラッキング」という“映像の中で動いているものを追尾できる技術”なのだが、その辺はややこしいので脇に置く。とにかく“ダニエルズ”がやっているのは、なるべくスタジオの外に飛び出してロケ撮影をして、できる限りCGに頼らず、合成用の素材も現場で実際に撮影すること。


 例えば“ダニエルズ”が手掛けたアトランタのバンド、マンチェスター・オーケストラの曲「Simple Math」のミュージックビデオでは、田舎道を運転中に鹿をよけようとした男が、車のコントロールを失って横転事故を起こす。勢い余って転がり続ける車内を延々と映しながら、男の人生が走馬灯のように流れていくのだ。




 画面の中では、過去の記憶とごっちゃになって男の周りをいろんなものが飛散する。飛び散ったガラス、舞い散る落ち葉、子供の頃に書いたラブレター、昔遊んだゲームボーイ、ウクレレ、そしてマンチェスター・オーケストラのメンバーと楽器たち……。“回転”という運動の中で現在と過去が混然一体となり、ノスタルジーとカタルシスが同時に押し寄せる作風は明らかに『スイス・アーミー・マン』に繋がっている。


 “ダニエルズ”はこのMVを作るにあたり、実際に落ち葉を撒き散らし、ゲームボーイを宙に浮かし、後からCGで描き加えることのないように実写の素材を撮りまくった。低予算という制約もあるが、「実際にやった方が楽しいから」と“ダニエルズ”はコメントしており、とにかく現場にあるものを駆使して世界観を創り上げるのが彼らの流儀なのだ。


 また、子供の頃の森の中のイメージはそのまま『スイス・アーミー・マン』に受け継がれている。ちなみに『スイス・アーミー・マン』でハンクとメニーが森の木々を使ってバスを模したオブジェを作るが、あれはスタッフが事前に準備していたのではなく、ロケ地の森にあった木々などを寄せ集めて、現場で作ってしまったのだという。つまりあのバスは、劇中のハンクでも手に入る材料だけでできているのだ。


 「Simple Math」のMVと『スイス・アーミー・マン』の最大の共通項は、事故を起こす男(演じているのはマンチェスター・オーケストラのリーダー、アンディ・ハル)が少年時代に想いを寄せていた女性が「サラ」であること。そう、『スイス・アーミー・マン』でメアリー・エリザベス・ウィンステッドが演じたハンクの想い人の女性と同じなのである。ぎこちない父親との関係も両作品に見られるモチーフであり、5分20秒の映像に込められたドラマの豊かさに感心させられる。


 ちなみに“ダニエルズ”とマンチェスター・オーケストラの関わりは深く、『スイス・アーミー・マン』の素晴らしいサントラを担当したのは「Simple Math」の主演を務めたアンディ・ハルとリードギタリストのロバート・マクダウェルである。



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