2017.10.02
『スイス・アーミー・マン』あらすじ
君となら、きっと生きて帰れる──。無人島で助けを求める孤独な青年ハンク(ポール・ダノ)。いくら待てども助けが来ず、絶望の淵で自ら命を絶とうとしたまさにその時、波打ち際に男の死体(ダニエル・ラドクリフ)が流れ着く。ハンクは、その死体からガスが出ており、浮力を持っていることに気付く。まさかと思ったが、その力は次第に強まり、死体が勢いよく沖へと動きだす。ハンクは意を決し、その死体にまたがるとジェットスキーのように発進!様々な便利機能を持つ死体の名前はメニー。苦境の中、死んだような人生を送ってきたハンクに対し、メニーは自分の記憶を失くし、生きる喜びを知らない。「生きること」に欠けた者同士、力を合わせることを約束する。果たして2人は無事に、大切な人がいる故郷に帰ることができるのか──!?
Index
ミュージックビデオ界から飛び出した天才コンビ
世間をアッと言わせるミュージックビデオを次々と送り出し、満を持して映画界に殴り込みをかけてきたのが、怪作にして快作『スイス・アーミー・マン』を監督したクリエイターユニット“ダニエルズ”。ダニエル・シャイナートとダニエル・クワンの2人組だ。
ミュージックビデオ出身で、独自のビジュアルセンスを持ったストーリーテラーといえば、大勢の人の頭に浮かぶのはスパイク・ジョーンズとミシェル・ゴンドリーだろう。ビースティー・ボーイズの70年代ドラマ風MV「Sabotage」などで注目を浴び、『マルコヴィッチの穴』(1999)で映画監督デビューしたジョーンズ。ビョークやケミカル・ブラザーズの摩訶不思議なMVで知られ『ヒューマン・ネイチュア』(2001)で映画監督デビューしたゴンドリー。ともに創意工夫に満ちた奇抜なアイデアを映像化する天才たちだ。
『スイス・アーミー・マン』(c)2016 Ironworks Productions, LLC.
“ダニエルズ”も『スイス・アーミー・マン』の参考映像としてスパイク・ジョーンズのCM作品を“死体”役のダニエル・ラドクリフに薦めるなど、明らかに影響を受けている。まだ1990年代頃まではMTV出身者というと「スタイルだけで中身がない」と揶揄されるような空気があったが、いち早くその先入観を覆したのがデヴィッド・フィンチャーである。そしてフィンチャーの登場以降に、インディーズのスタンスを貫きつつ業界に旋風を巻き起こしたのがジョーンズでありゴンドリーだった。そして“ダニエルズ”は、ジョーンズ/ゴンドリーの系統に連なる現在最注目のクリエイターと言えるだろう。