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『プロジェクトA』チャップリンからハロルド・ロイド、ブルース・リーからジェッキー・チェンへ。輪廻するアクション・コメディの因果
伝説のアクション、時計塔からの落下
「高層ビルの時計の針に、身一つでぶらさがる絶体絶命の男!」これはサイレント時代のスター、ハロルド・ロイド主演作『要心無用』(23)のクライマックスシーンだ。
デパート布生地売り場でうだつのあがらぬ売り子をするロイド。客寄せに成功したら千ドルの報奨金を出すという社長にロイドが出したアイデアは、鳶職の友人に14階建てデパートの壁面を登らせる、というもの。しかし、他愛もないイタズラから、その友人は警察に追われる身となってしまい、しかたなく衆人監視の中、ロイド自身がビルに登るハメになる。
ロイド作品は基本的にはコメディだが、暴走する路面電車の屋根に乗ったり、崩壊しながら爆走する馬車から馬に飛び移り、そのままチェイスを続けたりと、今見ても遜色のまったく無い見事なアクションシーンに溢れている。なぜ、ロイドはアクションに傾倒していったのだろうか?
『プロジェクトA』(C) 2010 Fortune Star Media Limited. All Rights Reserved.
それは、チャールズ・チャップリンの存在が理由ではなかったろうか?ロイドがまだ駆け出しの頃にはチャップリンはすでに押しも押されぬ大スターであり、ロイドもデビュー当時チャップリンのキャラクター「Tramp/放浪者」のマネをさせられたそうである。ロイドはチャップリンを超えるために、過激とも言えるアクションを取り込んでいったのではないだろうか。
そのロイドの『要心無用』時計ぶらさがりのオマージュシーンが『プロジェクトA』の時計塔からの落下シーンである。ジャッキーの場合、25mほどの高さにある時計の針にブラさがり、そこから落下して、そのままカットを割らずに演技をし続けるという凄まじいものである。
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ジャッキーも、やはり「神」ブルース・リーのマネをさせられた経験を持っている。「神」ブルース・リーを超えるために引用したのが、かつて「王」チャップリンのマネをさせられた経験を持ち、「王」を超えるためにアクションを取り入れたハロルド・ロイドである事は、運命的である。
ジャッキーが敬愛するバスター・キートンは、ロイドのさらに後のデビュー。ロイドを超える身体能力と無表情で、疾走感のあるアクションで人気を博していく。ちょうど、トニー・ジャーがジャッキーを超える身体能力を駆使し、過激なアクションで人気を博していったように。
文:
侍功夫
本業デザイナー、兼業映画ライター。日本でのインド映画高揚に尽力中。
「プロジェクトA エクストリーム・エディション」
ブルーレイ発売中 5,000円+税
発売元:ツイン 販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
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