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『プロジェクトA』チャップリンからハロルド・ロイド、ブルース・リーからジェッキー・チェンへ。輪廻するアクション・コメディの因果
サイレント時代のテイストを活かした『プロジェクトA』
『ヤングマスター 師弟出馬』(80)以降のジャッキー作品において、骨子となる物語を担ったパートナー、脚本家のエドワード・タンが『レイダース 失われたアーク』(81)に触発された事が 『プロジェクトA』 誕生のきっかけである。
1936年代を舞台にした“時代劇”で、連続活劇映画へのオマージュである 『レイダース 失われたアーク』 と同じ様に、イギリス領になった頃の香港を舞台にした、殴り合いと刀剣のチャンバラアクション映画をジャッキーに提案する。ジャッキーはそのアイデアに、 サイレント時代のハリウッド製コメディのテイストを加える。
中でもバスター・キートン作品は大きく作品に影響を与えた。細い路地を自転車で走り回るチェイス。坂を駆け上がり、駆け下る追いかけっこなどは、キートン作品におけるアクションの換骨奪胎したシーンである。また、 時計塔機械室での戦いはチャールズ・チャップリンの『モダンタイムス』(36)で、歯車にまきこまれていくシーンのアイデアを流用している。
『プロジェクトA』(C) 2010 Fortune Star Media Limited. All Rights Reserved.
キートンについてはよほど気に入ったのか続編『プロジェクトA2』(87)で、『キートンの蒸気船』(28)の有名シーン「人に向かって壁倒壊! 窓にハマってスッポリセーフ!」を引用している。
ジャッキーは以前からサイレント時代の、特にコメディとコメディ俳優が言葉を使わず肉体で、しかもスタント・ダブルではなく俳優本人が、驚くような身体能力で表現する姿に惹かれていたそうだ。そして、それらコメディ作品の、何十年経っても人々を笑わせる絶対的な強度を研究し、作品に活かしていった。
本作にはそんな研究成果が堰を切ったように溢れ出ているのである。そして、本作を語る際に避けては通れない場面もまた、そんな研究の賜物であった。