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『ドリーム』80年代の傑作『ライトスタッフ』と併せてみるべき理由とは!?

(c)2016Twentieth Century Fox

『ドリーム』80年代の傑作『ライトスタッフ』と併せてみるべき理由とは!?

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脚光のあたる場所のみならず、“近くて遠い”ヒーローを描く



 また、我々が『ライトスタッフ』について想起する時、そこには『ドリーム』のヒロインたちと同じく“近くて遠いところ”に立つ人物が真っ先に胸に浮かんでくるはずだ。サム・シェパード演じる空軍パイロット、チャック・イェーガーがその人である。7人の宇宙飛行士にも増して、崇高な存在感を放つ彼は、誰よりも優秀かつ“ライトスタッフ(正しい資質)”を持ちながらも“大学を出ていない”ことがネックとなり選抜候補に入ることができなかった。しかしそれでも本作は、今日も一人孤独にジェット・エンジンのテスト飛行に挑む男の姿にカメラを向ける。宇宙飛行士たちが表舞台で脚光をあびる中、砂埃にまみれて自分の道をただひたすら歩み続けるイェーガーを、カメラは「ここにもヒーローあり」と言わんばかりにかなりの時間を割いて描き続けるのである。



『ドリーム』(c)2016Twentieth Century Fox


 筆者自身、初めて『ライトスタッフ』を観たときには、このイェーガーという登場人物の存在に、西部劇にも似たアウトサイダー的な主人公の姿を重ね、いかにもアメリカ人が好きそうな構成だなと感じたものである。だが、『ドリーム』を観た後に改めてこの映画を再訪すると、どこか映画としての視点が通底しているように思えてならなかった。この映画はすでに83年の時点で、表舞台で眩いスポットライトを浴びる者だけが歴史の主人公ではないことを、何よりも声高に教えてくれていたのである。歴史的偉業の陰には日々絶え間なく孤独な奮闘を繰り広げている人たちがいて、彼らもまた語られるべき視点であり、重要な主人公なのだ。その意味では、『ライトスタッフ』と『ドリーム』はどちらも、究極的には自らの道をたゆまず歩み続ける“個人”の物語と言えるのかもしれないし、もっと言うと、その個人が有する<正しい資質>についての映画だったのかもしれない。




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