時代背景を同じくする宇宙映画の傑作『ライトスタッフ』
“マーキュリー計画”に代表される宇宙開発時代を描いた一大叙事詩『ライトスタッフ』は、完全版だと優に上映時間が190分を超える。1日のうちのこれだけの時間をDVD鑑賞に充てるのは大変なことだが、もしもあなたが『ドリーム』を鑑賞した直後であるならば、これはまさに絶好のタイミングである。これらを見終わった後、まるで両作が数十年の時を経てようやく完結した壮大な2部作だったのではないかと感じるほどの充実感を得ることができるはずだ。
それはなぜか。まず押さえておきたいのは、『ライトスタッフ』と『ドリーム』は描かれる年代設定がまるっきり重なるという点である。ただし、前者があくまで表舞台で華やかな脚光を浴びる<アメリカのヒーロー=7人の宇宙飛行士たち>をメインに描くのに対して、『ドリーム』は同じNASAであっても施設的には遠く離れたところで働くアフリカ系アメリカ人女性3人がメインとなる。
『ドリーム』(c)2016Twentieth Century Fox
私たちは今や、あらゆる出来事において“語られるべき視点”がひとつだけでは足りないことを知っている。歴史が大きく動く時、そこには数限りないディテールのうごめきがあるはずで、視点や語り口は複数あってしかるべきだ。そういった意味でも、これら両作に触れておくと“近くて遠いところ”に存在した二つの視点を、まるで二つのカメラを駆使するかのように、NASAの宇宙開発を広く把握することができるようになり、奥行きもグッと広がる。施設内の角を曲がればお互いの登場人物の動線がひょっこり交錯しそうなこの“近さ”が、なんとも言えない臨場感をもたらしてくれることだろう。