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『ファースト・マン』リスクを負い挑戦する姿が宇宙飛行士と重なる、デイミアン・チャゼル監督

(c)Universal Pictures

『ファースト・マン』リスクを負い挑戦する姿が宇宙飛行士と重なる、デイミアン・チャゼル監督

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※2019年2月記事掲載時の情報です。


『ファースト・マン』あらすじ

1961年 愛する娘との別れ

空軍でテストパイロットを務めるニール・アームストロング(ライアン・ゴズリング)は、仕事に集中でき ずにいた。まだ幼い娘のカレンが、重い病と闘っているのだ。妻のジャネット(クレア・フォイ)と懸命に 看病するが、ニールの願いもかなわずカレンは逝ってしまう。いつも感情を表に出さないニールは妻の 前でも涙一つ見せなかったが、一人になるとこらえ切れずむせび泣く。悲しみから逃れるように、ニールはNASAのジェミニ計画の宇宙飛行士に応募する。


1962年 人類の長年の夢、月旅行へ

NASAに選ばれたニールは、妻と長男を連れてヒューストンへ引っ越し、有人宇宙センターでの訓練と 講義を受ける。世界の宇宙計画ではソ連が圧勝していたが、そのソ連もまだ到達していない“月”を目指 すと指揮官のディーク・スレイトン(カイル・チャンドラー)は宣言する。月への旅に耐えられる宇宙船は重すぎて、たとえ到着しても月から打ち上げられない。飛行士は母船 から小型船に移り着陸、任務終了後に母船とドッキングして地球へと帰る。2機のドッキングができると 実証するのがジェミニ計画、成功したら月面に着陸するアポロ計画へと移行することが決まる。


1964~65年 訓練&訓練&訓練.........

宇宙空間で活動するための想像を絶するハードな訓練を共にし、飛行士たちは絆を結んでいく。ニー ルが最初に心を開いたのは、軍人ばかりの飛行士のなかで互いに民間人だったエリオット・シー(パト リック・フュジット)だ。向かいに暮らすエド・ホワイト(ジェイソン・クラーク)とは、家族ぐるみで親し くなった。ある夜、エドの家に集まった時、テレビからソ連が人類初の船外活動に成功したというニュースが流 れる。それはエドがもうすぐ成し遂げるはずのミッションで、またしてもソ連に先を越されてしまった。


1966年 死を覗き見たドッキング

「ディークから、ジェミニ8号の船長として史上初のドッキングを命じられるニール。その任務から外さ れたエリオットが、訓練機の墜落事故で命を落とす。友の無念を胸に、デイヴ・スコット(クリストファー ・アボット)と2人、ジェミニ8号で飛び立ったニールは、アジェナ目標機とのドッキングに成功するが、ジ ェミニの回転が止まらなくなる。非常事態に家族への通信も切られ、血相を変えたジャネットがNASA へと駆け付けるが、何とかニールの冷静な判断で危機を脱出、アジェナを切り離して帰還する。その結 果、NASAはメディアに人命を危険にさらし、莫大な費用を無駄にしていると書き立てられる。だが、調査委員会はニールの功績を認めてアポロ計画へと移行、パイロットにエドが選ばれる。名誉 ある任務に就いたエドを、ニールとデイヴは心から祝福するのだった。


1967年 アポロ計画最大の悲劇

エドと2人の乗組員が、アポロの内部電源テストを行っていた時、ニールはホワイトハウスのパーティ ーに出席していた。政治家と話が合わず手持ち無沙汰の彼に、ディークから電話が入る。それは、アポ ロ内部で火災が発生し、3人全員が死亡したという知らせだった――。


1969年 “未知”へのカウントダウン

莫大な税金をかけて犠牲ばかりだと、アポロ計画は世間から非難を浴びる。逆風のなか、月に着陸 する11号の船長にニールが任命される。乗組員は、バズ・オルドリン(コリー・ストール)とマイク・コリ ンズ(ルーカス・ハース)の2人だ。出発の日、ジャネットは息子たちに黙って行こうとするニールに、「帰れない場合の心構えをさせて」 と訴える。無邪気に笑う次男の横で、長男は父に「戻ってこれる?」と尋ねるのだった――。家族と別れ、宇宙服に身を包み、3人は遂に“未知”へと旅立つ一。


Index


デイミアン・チャゼル監督の新しい挑戦



 高圧的な教員とジャズドラマー志望の学生との奇妙な関係と闘いを描いた、過激な一作『セッション』(14)で一躍話題となり、L.A.で夢に生きる男女を美しくも切なく描いたミュージカル『ラ・ラ・ランド』(16)では、最年少でアカデミー賞監督賞を受賞したデイミアン・チャゼル監督。いま最も勢いに乗っている彼の新作『ファースト・マン』は、いままでの作品とは全く異なる内容だ。それは、人類史上最初に月面を歩いた宇宙飛行士ニール・アームストロングの物語である。



『ファースト・マン』(c)Universal Pictures


 もともと本作は、クリント・イーストウッド監督によって撮られるはずの企画だったが、長い間凍結されていた。これまでチャゼル監督は、自分で脚本を書いて、自身を色濃く投影した内容の作品を撮ってきたが、今回はそんな経緯もあって、はじめて脚本を他の脚本家に任せている。アカデミー賞で作品賞・脚本賞を受賞した『スポットライト 世紀のスクープ』(15)のジョシュ・シンガーである。


 それを聞くと、本作はチャゼル監督の作家性がこれまでより薄いものになっているのではと想像できる。だが、その予想に反し、本作の内容は前2作に比べても、より挑戦的なものになっていた。ここでは、『ファースト・マン』の何が凄いのかを、じっくりと考察していきたい。



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