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新たな血で蘇る『ドラキュラ伯爵』※注!ネタバレ含みます。【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.38】

新たな血で蘇る『ドラキュラ伯爵』※注!ネタバレ含みます。【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.38】

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イギリス製のドラキュラの血





 第2話ではついに伯爵がイギリスを目指して船旅に出る。ここまでは原作通りだが、物語は伯爵以外の乗客たちを巻き込んだ密室ミステリーのような様相を呈し始める。船員や乗客が行方不明になったり殺されたりして、もちろん言うまでもなく犯人は伯爵に決まっているのだが……。舞台となる船の船長を演じるのは『SHERLOCK』の鑑識アンダーソン役でお馴染みのジョナサン・アリス。アンダーソンはシャーロックと反目するコミックリリーフ的キャラクターだったが、ソコロフ船長は打って変わって勇気のある善良な人物で、アガサとともにドラキュラに立ち向かう。ジョナサン・アリスは結構好きで、作品で見かけるたびに注目しているのだが、こういう役は珍しいのではないだろうか。ちなみに『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』では反乱軍の会議に参加しながらも銀河帝国の超兵器デス・スターの存在を信じようとせず、それどころか反乱軍はもうおしまいだなどと言い出し、戦いに消極的な態度を取る議員という端役だった。そういうキャラクターのイメージが強い。


 『SHERLOCK』からはもうひとり、マーク・ゲイティスも顔を見せている。彼の扮するレンフィールドはドラキュラのしもべであり、原作では精神病院に入れられていたが、本作では弁護士としてドラキュラのロンドン生活を助ける(これについては後述)。レンフィールドが弁護士というのはベラ・ルゴシがドラキュラに扮した『魔人ドラキュラ』の筋書きを思い起こさせる。そのバージョンでは冒頭トランシルヴァニアの伯爵を訪ねるのもレンフィールドの役目であり、そこでドラキュラの下僕にされてその後の渡英や生活の世話する羽目になるというものだった。それにしてもマーク・ゲイティス、『SHERLOCK』では政府の役人として絶大な力を振るう、シャーロックの兄マイクロフト役だったが、なんとなく自分が好きな役を自分でやっているような印象。マイクロフトやレンフィールドというところが好きで選んでいる気がする……。


 もちろんこれまでの映像化作品に見られたドラキュラの要素が、所々に散りばめられているのも注目したいところだ。ジョナサンが初めて対面したドラキュラはヨボヨボでしわくちゃの老人で、そこから日ごとに客人が衰弱していくのに対しどんどん若返っていき完全なドラキュラのヴィジュアルが完成するという流れがおもしろいのだが、老ドラキュラのメイクや着ているガウンなどから1992年版でゲイリー・オールドマンが扮したバージョンを連想させる。


 獲物を前に目を赤くするのも忘れられない。これはハマー・フィルムの『吸血鬼ドラキュラ』でクリストファー・リーが扮したバージョンが有名だが、同じくイギリス製のドラキュラ映像化作品として意識しているところもあるのではないだろうか。クラシカルなところをおさえつつ現代版のドラキュラを描こうとする本作は、まだユニバーサルによるドラキュラ像が根強かった頃、古典的な世界観に迫力のある役者やメイク、スピーディなテンポを取り入れて見事ドラキュラをイギリスに取り戻したハマー版の血を引いているように思う(ちなみにハマーもシャーロック・ホームズ作品を制作している)。



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