ウェリントンの影の世界
ヴァンパイアなので当然活動するのは夜である。高齢のピーターを除いたメンバーは毎晩目一杯お洒落をして(姿が鏡に映らないので服装はお互いがチェックする)バスに揺られて夜の街に繰り出し、獲物を探す。なぜかウェリントンには彼らのほかにも大勢闇の生き物たちが暮らしていることになっており、道中たくさんの同類と出くわすが、ワイティティらの地元ということもあり、歩いていれば誰かしら知り合いに出くわす感じがそのまま表されているかのよう。当然ヴァンパイアは中から招かれないと建物に入ることができないので、大抵の店には入ることができず(もちろん店側は拒否などしていないのだが)、結局ヴァンパイアが経営する店に集まるしかなくなる。ヴァンパイアの弱点や特性がハンデとして描かれるのは可笑しいが、同時に寂しさもある。
地元での夜遊びには対立グループが付き物なのか、一行はしばしば仲の悪い狼男のグループと遭遇して罵り合う。ヴァンパイアのライバルとしてウェアウルフを出したところもいいが、同時に彼らのライフスタイルや悩みどころも説明するのが上手だ。ヴァンパイアから投げられた枝を思わず拾いに行きそうになったり、いざ満月の夜には変身に備えて、あらかじめ破けてしまいそうな服を避けてジャージを着るようにするといった具合。闇の生き物は大変なのである。
夜の狩りでありついた食事の後片付けや、血潮を浴びた服のクリーニングなどの雑用を任されるのはヴァンパイアの使い魔の役目で、ディーコンの使い魔ジャッキーも印象的なキャラクター。ドラキュラ伯爵にとってのレンフィールドのような立場で、使い魔たちの望みはご主人様にヴァンパイアにしてもらい不老不死の身となること。しかし、ヴァンパイアはヴァンパイアになった時点の年格好で永久に過ごすことになるので、ジャッキーは少し焦り気味。主人が契約通り約束を果たしてくれるのを待ち望んでいるが、ディーコンははぐらかして先延ばしにし、ジャッキーに用事を言いつけて都合よく扱うばかりだ。ヴァンパイア以外のキャラクターたちも出てきて世界観を広げるだけでなく、現実にもいそうなポジションに重ねられているところがいい。