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リハーサルをいつもの50倍以上はやった。サム・メンデス監督『1917 命をかけた伝令』【Director’s Interview Vol.53】

リハーサルをいつもの50倍以上はやった。サム・メンデス監督『1917 命をかけた伝令』【Director’s Interview Vol.53】

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『天国と地獄』は私にとってのマスターピース



Q:そうした映画作り全般で、あなたがとくに目標にしている監督を挙げてみてください。


サム:その質問には、どこから答えていいかわからない。挙げるとしたら何百人ものリストになってしまうからね(笑)。とりあえず思い浮かぶのが、ジョン・フォード、ルキノ・ヴィスコンティ、フランシス・F・コッポラ、デヴィッド・リーン 黒澤明、デヴィッド・フィンチャー、クリストファー・ノーラン、アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ、アン・リー……。彼らの共通点は名監督であると同時に、たぐいまれなストーリーテラーであることだ。スタイルを優先するあまり、物語が損なわれる映画も多いが、彼らの作品ではありえない。私もキャリアを重ねるごとに、彼らからその部分を吸収したいと考えるようになった。


Q:ではその中から、黒澤監督作品への思いを聞かせてもらえますか?


サム:日本向けのインタビューということだね(笑)。10代で観た『蜘蛛巣城』(57)は鮮烈な記憶として残っているし、『乱』(85)は特筆すべき作品だが、最も好きなのは『天国と地獄』(63)だ。黒澤作品の中では、『蜘蛛巣城』や『乱』、『七人の侍』(54)ほど映像的なインパクトはないかもしれないし、物語も明快すぎるかもしれない。しかし裕福な社長が暮らす丘の上の家など、あらゆる描写に貧富の差が込められていたりして、その「センス」に敬服してしまうんだ。このように感覚的に物語やテーマを伝えることを、私は黒澤明監督のような「映画のマスター」から学び続けている。




Q:あなたの作品も多くの後継者に影響を与えていると思います。観る人に映画が与える力について、どのように考えていますか?


サム:もちろん私は、自分の映画で観た人の人生や考え方が変わってほしいと思って作っている。しかし決して自分の意見を押し付けたくはないので、映画が公開された後は、私が語った物語へのさまざまな反響を素直に受け止める。それがストーリーテラーの宿命だ。でもたしかに、私の映画で人生が変わったという人がいたら、それは監督としてとても光栄なことだ。


Q:では最後に、『1917 命をかけた伝令』を完成させた今、次のチャレンジについて教えてください。


サム:私の監督人生で最も大きなチャレンジは、2本の「007」映画だった。そろそろミュージカル映画も作ってみたいし、SF映画にも挑戦したいと思っている。とにかく映画のスタイルを、物語に合わせること。今後もそれを目標に撮っていきたい。ひとつだけ断言できるのは、二度とワンカットの作品は撮らない。もうこりごりだよ(笑)。次の作品では、物語をスピーディに動かし、風景や時間が自由に行き交うように「編集」という映画本来の作業に戻りたいね。



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監督:サム・メンデス

『アメリカン・ビューティー』(99)でアカデミー賞®の監督賞と作品賞のみならず、ゴールデングローブ賞や全米監督協会賞でも監督賞を受賞。それ以降、アカデミー賞®受賞『ロード・トゥ・パーディション』(02)、『ジャーヘッド』(05)、『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』(08)、『お家(うち)をさがそう』(09)、英国アカデミー賞およびアカデミー賞®を受賞した『007 スカイフォール』(12)、『007 スペクター』(15)などを監督。これまでにオリバー賞4つ、トニー賞2つ、イブニング・スタンダード・シアター・アワード5つ、複数の批評家協会賞やハンブルク・シェイクスピア賞など、数々の賞を受賞。2000年には大英帝国勲章を与えられ、2005年には全米監督協会の功労賞を獲得し、2015年にはブリタニア賞で監督賞を贈られた。



取材・文:斉藤博昭

1997年にフリーとなり、映画誌、劇場パンフレット、映画サイトなどさまざまな媒体に映画レビュー、インタビュー記事を寄稿。Yahoo!ニュースでコラムを随時更新中。

 





『1917 命をかけた伝令』

(c)2019 Universal Pictures and Storyteller Distribution Co., LLC. All Rights Reserved.


公式サイト:1917-movie.jp.

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