神木隆之介出演のおすすめ映画(2017~2020)
9.『3月のライオン』前編/後編(17) 監督:大友啓史 138分/139分
『るろうに剣心』シリーズの大友監督と再び顔を合わせた本作では、「ハチミツとクローバー」の羽海野チカによる人気漫画の実写映画化に挑戦。複雑な内面を抱えた17歳のプロ棋士を、圧巻の演技で体現した。
家族を失い、生きていくために棋士の家に弟子入りした少年(神木)。史上最年少でプロ棋士となった彼が、数多くの試練を乗り越えながら成長していく姿を、エモーショナルかつ骨太な筆致で描き出す人間ドラマ。前編・後編の2部構成になっており、心身ともに棋士になりきった神木の「盤面で語る」演技には、驚かされるばかりだ。
有村架純、倉科カナ、染谷将太、清原果耶、高橋一生、中村倫也、佐々木蔵之介、加瀬亮、伊藤英明、伊勢谷友介、豊川悦司といったそうそうたる出演陣も、大きな魅力。彼らとの触れ合いの中で、主人公が等身大の高校生らしい感情を発芽させていくグラデーションが美しい。神木の、セリフに依存しない「黙の演技」に心を奪われるだろう。
なお、本作で棋士を演じるにあたって特訓を積んだ神木は、日本将棋連盟から「アマチュア初段」の段位が与えられたそうだ。
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10.『ラストレター』(20) 監督:岩井俊二 120分
『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』(17)、『フォルトゥナの瞳』(19)、『屍人荘の殺人』(19)などの映画や、『刑事ゆがみ』(17)、『やけに弁の立つ弁護士が学校でほえる』(18)、『集団左遷!!』(19)、『連続ドラマW 鉄の骨』(20)といったテレビドラマなど、ここ数年で目覚ましい活躍を見せている神木。
そんな彼の最新映画が、抒情的な映像詩を得意とする岩井俊二監督による『ラストレター』。福山雅治が扮する小説家の高校時代を演じ、瑞々しい存在感を披露している。広瀬すず、森七菜と同じ空間にいても、高校生にしか見えないという神木の特質が、如実に出た映画といえるだろう。ベテラン俳優にもかかわらず、演技をあえて未完成に「戻し」、フレッシュさをまとった神木の「職人芸」には舌を巻くだろう。
詩情豊かなストーリーや映像表現はもとより、役者本来が持つ「におい」が重要なファクターとなる岩井監督作品で、水を得た魚のように華麗に泳ぐ神木の姿が印象的だ。
神木の演技は作品によってブレもムラもなく、作り手にとっては頼もしく、見る側にとっては安心できる存在だ。近年では会社員の役もこなすようになり、これから年を重ねて、ますます魅力的な役者になっていくことは間違いない。
一方、佐藤健のYouTube番組で見せるような、快活なキャラクターも微笑ましい。変に染まらず、キャラを作らず、観る者に癒しと笑顔を届けられる存在――。神木隆之介は、この先も今まで通り堅実で、ずっと変わらないのだろう。その継続性が、愛おしい。
文: SYO
1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイト勤務を経て映画ライター/編集者に。インタビュー・レビュー・コラム・イベント出演・推薦コメント等、幅広く手がける。「CINEMORE」「FRIDAYデジタル」「Fan's Voice」「映画.com」「シネマカフェ」「BRUTUS」「DVD&動画配信でーた」等に寄稿。Twitter「syocinema」