イギリスのスコットランドにあるグラスゴーを故郷にもつ、シングルマザーのローズ。彼女の夢はアメリカのナッシュビルで、歌手として成功すること。しかし彼女には、二人の小さい子供と老いた母親がいた。夢か家族か、若さと才能を兼ね備え、遂に掴んだチャンスを前に、葛藤する彼女がたどり着いた答えとはーー?
主題歌の「GLASSGOW」が賞レースで音楽賞を席巻、Rotten Tomatoesでは93%FRESHと高評価を獲得した。この音楽映画の傑作を生み出した、監督のトム・ハーパーに話を伺った。
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人を描いた脚本に惹かれる
Q:本作のどこに惹かれて、監督を引き受けられたのでしょうか。
トム:この映画の興味深いところは、何が正しくて、何が間違っているかを描いている訳ではない点だ。同じような構造の映画は他にもあるが、そういった映画の大半はいつも主人公が正しく、社会や何かに対して立ち向かっているというものだ。でも、ローズに関しては、彼女と子供の関係を見ていると複雑な気持ちになるし、ローズの母親と子供のためにも、歌手の夢は諦めた方が良いのではないかとさえ感じる。
彼女にとってどんな決断が良いのか明確な答えはないし、実際の人生もそういうものだと思うんだ。僕自身も子供がいて、子供たちにとってどうするのが良いのか、一方でお金を稼ぐためには自分たちのキャリアも考えなければならないし、そのバランスの取り方を妻と相談したりする。そういった難しい状況が絶えずあるというのも人生だからね。
Q:脚本を読んだ時はいかがでしたか?
トム:人を描いた脚本に心惹かれるんだ。気がつけばそういう脚本に出会っているね。特にジャンルを意識してる訳ではなく、感情に訴えかけてくる何かがあるかどうかを考えている。
この脚本を初めて読んだ時は、前向きな気持ちになったし感動した。一目惚れしたんだね。コメディという観点でも、この脚本には観たくなる要素がすごく詰まっていたんだよ。
イギリスは、『フル・モンティ』(97)や『リトル・ダンサー』(00)のように、逆境を乗り越える物語を数多く生み出してきた歴史がある。この映画もそれを受け継いでいると思うよ。