希望の党なのに「打倒、小池百合子!」ドラマが凝縮された選挙戦
Q:映画の後半は2017年、小川さんが「希望の党」から出馬した選挙戦に焦点をあてています。本作のクライマックスとも言える部分で、かなり長いパートですがドラマが凝縮されていて飽きさせませんね。
大島:素材を1回並べてみて、どこを抽出していくか、というせめぎ合いでしたから、どうしても撮れたものの面白さに引っ張られます。
Q:圧倒的に面白いんですが、特に印象的だったのは小川さんのご家族です。ご両親、奥さん、娘さんまで。どこにでもいそうな3世代の家族が選挙を戦う姿が新鮮でした。
大島:あれは小川さんぐらいの年代の政治家で、たまたま実現した家族構成ですね。つまり親も年をとりすぎていなくて、子供もある程度の年齢になっている。
僕は2003年の時点で小川さんのご両親には惚れ込んでいたんです。本当に善良な田舎のおじさんとおばさん。それでいてすごく芯があって頭がいい。
Q:2003年の時点で2人の幼い娘さんも映像で捉えられていて、その成長した姿が見られるのも味わい深いです。
大島:2003年の映像と対比できるのは分かっていたので、2017年はご家族にもカメラ向けていくというのは決めていましたね。
Q:もう一つ印象的だったのは、小川さんは当時、小池百合子さんが立ち上げた「希望の党」から出馬したけど、選挙中もずっとこれで良かったのか悩んでいる。それで、ついに「打倒、小池百合子だ!」と言い出してしまう。自分が所属する党の党首なのに(笑)。
大島:僕はあのシーンを褒められるのが一番嬉しいんですよ。あれは本当にドキュメンタリーとして面白い瞬間が撮れたし、僕じゃなかったら撮れてないと思います。あそこは色々なものが見えますよね。
Q:大島監督は、被写体と一定の距離をとるイメージがあったんですが、今回は小川さんにすごく寄り添っている印象がありました。
大島:やっぱり被写体によって変わってくると思うんです。小川さんは、これまでで一番距離感が近い人ですね。それはやっぱり年齢が近いとか、共有した時間が長いとか、あと単純にウマがあったというのもありますね。
こう言うと、ちょっとおこがましいかも知れませんが、ある時期からカメラが回っていない時に、僕が彼の相談相手みたいになっていたんです。おそらく彼にとって身内とか事務所の人以外で、「今の政界がどう見えているのか」「自分はこう考えているが、どう思うか」とか、そういうのを聞く、何人かのうちの一人が僕だったと思うんです。
Q:だからこそ、「打倒、小池百合子だ!」という言葉が撮れたんですね。