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  2. Director‘s Interview
  3. エンタメとして高いレベルに達した、稀有な政治家ドキュメンタリー『なぜ君は総理大臣になれないのか』大島新監督【Director’s Interview Vol.63】
エンタメとして高いレベルに達した、稀有な政治家ドキュメンタリー『なぜ君は総理大臣になれないのか』大島新監督【Director’s Interview Vol.63】

エンタメとして高いレベルに達した、稀有な政治家ドキュメンタリー『なぜ君は総理大臣になれないのか』大島新監督【Director’s Interview Vol.63】


現在、公開中のドキュメンタリー映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』は平日にも関わらず劇場を満席にしている。当初は東京で2館のみの上映だったが、その熱は広がり、公開は全国に拡大中だ。


エリート官僚の地位を捨て、政治の世界に飛び込んだ香川県選出の衆議院議員、小川淳也。彼の17年に及ぶ苦闘を描き出した本作は、突っ込んだ取材、巧みな編集、そして被写体の魅力があいまってエンターテインメントとしての完成度が高く、観客をスクリーンに釘付けにする。


監督は、これまでテレビや映画で多くの傑作ドキュメンタリーを発表してきた大島新。本作の誕生秘話、その驚きの舞台裏を聞いた。


Index


映画の出発点「なぜこの人は優秀なのに、うまくいかないんだ?」



Q:政治家という一見地味で難しそうな被写体なのに、映画として純粋に面白くて驚きました。ドキュメンタリーを敬遠しがちな人にこそ是非見てほしい作品です。


大島:今の政治状況に対しては色々思っているのですが、第一に「面白いドキュメンタリーを作りたい」という思いがあったので、そう言われると嬉しいです。


Q:製作のきっかけは、2003年のフジテレビのドキュメンタリー番組だそうですね?


大島:そうです。実は私の妻が小川さんの奥さんと高校の同級生で、「今度こんな人が香川の選挙に出るんだよ」っていう話を聞いて、その時は企画も通さず、すぐに彼の選挙戦を取材したんです。

それでフジテレビに話をしたら「面白そうだけど1人じゃ番組にできない。少なくとも3人は取材して、オムニバスにしてほしい」と言われました。


だから、その後に旭川の無所属の男性と横浜の社民党の女性を取材して、その3人のオムニバスで『地盤・看板・カバンなし』というドキュメンタリー番組を作りました。




Q:その後、17年の時間が経過しましたが、大島監督が小川さんを映画にしようと思ったのは何故だったんですか?


大島:簡単に言うと「なぜこの人はこんなに真っ当で優秀なのに、うまくいかないんだ?」という疑問です。2003年に初めて会った時に「総理大臣になりたいですか?」って聞いたら、彼は「政治家をやるからには目指します」と言ったんです。でもその後を追いかけると、全然駄目そうじゃない?と。


「40代半ばからトップに立って、数年間良い仕事をして議員を辞めたい」ってずっと言っていたのに、2016年にはもう45歳になっていましたから。「全く目がないよね?」と思って、その理由がいったい何なのか僕のカメラに教えてくださいと。それがこの映画の出発点です。


Q:小川さんが政治活動を始めた2003年から今までを振り返ると、日本の政治がポピュリズムに大きく傾斜していった印象があります。つまりキャラの強い政治家が選挙でも強くなった。


大島:全くおっしゃる通りです。言葉が乱暴で強いことを言い切る、そういう政治家に人気が集まるようになっていった。それは世界的にも同じで、例えばアメリカのトランプ大統領に代表される政治家がそうです。日本だったら小泉純一郎さんとか橋下徹さんがそうですよね。


でもそんな中で小川さんは丁寧であろうとするあまり、ちょっと話が長くなったり、人の気持ちに配慮するから形容詞が増えたりする。


さらに「政治家は、多数決で51対49で勝ったら、負けた49の方の人の思いを背負わなくてはいけない」と言う。まさにあれが小川さん。でも、そういう負けた側に配慮する人が、どんどん今の政治の本流からは外れていく。ポピュリズム政治の中では、彼はなかなか活躍できないだろうとは思っていました。


Q:小川さんのホームページで政策をチェックしたんですが、極端にリベラルというわけでもないですね。


大島:映画の中でも彼が「自分は前原誠司さんほど右ではないけど、枝野幸男さんほど左ではない」と言っています。小川さんは総務省の官僚だったから、国家を運営していくということの重要さは知っている。だから何でも反対する、昔ながらの野党議員とは違うんです。


小川さんは、もし仮に二大政党制のようなものができるとすれば、保守政党とリベラル政党の政策は8割から9割は一緒であるべきだと考えていて、残りの1、2割の違いの中で、国家と国民の利害が対立する場合、国家の側を選ぶのが保守政党で、国民の側を選ぶのがリベラル政党だと言っています。だから時々、「彼は昔だったら自民党のハト派にいてもおかしくない」と言われるんです。



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