独特の好きな“間”
Q:映画を観ていて心地よかったのが、独特の“間”でした。映画を観ていても焦らせる感じがなく、かと言って退屈でもない。あの“間”はどのように作り出されるのでしょうか。
古厩:うん、確かに間がありますよね。間が好きなんですよ。ふと立ち止まるようなところが好きで、何かしら必ず入れてますね。あまり意識してるわけでもないのですが、すごくやっている気がします。でも、映画を観るときはスピード感のある映画も好きなんですけどね。でも撮るときはこういう間があるのが好きですね。何でかな(笑)。
Q:撮影現場は長回しが多いのですか。
古厩:長いですね。僕は長いです。ただ、だらだらっていう感じで、あんまりよく分かんないんですよ(笑)。あんまりうまくできない。ホントにうまくいってないです(笑)。
Q:撮影現場ではモニターを見ますか、それともお芝居を直接を見るのでしょうか。
古厩:モニターは死んでも見ません!と言いつつ、たまに見てますね(笑)。
現場ではキャメラマンの横に必ずいるようにしていて、大きいモニターは見ないようにしてますね。でもカメラの横に小さなモニターがついているので、ついチラッと見ちゃうときはあります(笑)。昔はモニターってなかったんですけどね。
モニターで画角が見えちゃうと、「ああちょっとなんか画が良くない」みたいなことをつい言っちゃうんです。でも画角って本当はカメラマンの専売特許なんですよ。そこに口を出し始めると、どうも画が自分の思ったようにしかならないっていうのは、良くないなと思っています。
Q:監督の独特の“間”も効いているのか、出演者の皆さんは非常に落ち着いていて、抑制の効いた演技をされているように見えました。特に小寺さんを演じた工藤遥さんは難しかったのではないかと思うのですが、演技についてはどのように話されたのでしょうか。
古厩:小寺さん難しいですよね。誰かと話すシーンが多いわけでもないし、最初は本読みしてもうまくいかないこともありました。なので、頭の中で歌でも流しておいて集中してみたらって話したんです。工藤さんはアイドルの経験もあるし、歌ったり踊ったり、何かを一心にやるのは得意みたいで、一度コツを掴んだら、その後は集中してできていましたね。
Q:伊藤健太郎さんは、最近は引く手数多で、いろんなキャラクターを器用にこなしている印象がありますが、今回はいかがでしたか。
古厩:撮影前に他の作品を見ておこうと思って、『惡の華』(19)とか見てたんですが、あれはド変態の役でしたね(笑)。これは大丈夫かなと思ったんですが、撮影してみたら、何もしないでその場に佇むことが、しっかりできる人でした。
僕は、光にただ照らされて佇んでいる人を撮るのが好きなんです。それは今回のテーマでもあったので、それをちゃんと理解してもらえたのは、すごく良かったですね。
Q:小寺さんはマイペースで、最初から最後までほぼ変わりませんが、周囲の子たちは微妙に静かに成長していきます。その点ではニュアンスをつけて演じるのは難しいのかなと。
古厩:何かみんなモヤモヤした顔をして演じてくれました。そういうところが分かってもらえたのは良かったですね。モヤモヤしてる人って撮っててすごく面白いんです。自分の形が定まっていない、若いってそういうことでもあるんですよね。そして、そういう子は小寺さんみたいな眩しい存在に感化されやすいんです。演じた子達が、その辺を分かってくれたのかなって思いますね。