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今撮らなければ消えてしまうものがそこにある『もち』小松真弓監督&及川卓也プロデューサー【Director’s Interview Vol.67】

今撮らなければ消えてしまうものがそこにある『もち』小松真弓監督&及川卓也プロデューサー【Director’s Interview Vol.67】

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日々変化していく脚本と撮影



Q:映画では四季の移り変わりも描かれますが、実際にはどれくらいの期間撮影されたのでしょうか。


小松:スタッフと一緒に撮ったのは6月~3月ぐらいの間なんですが、最初は私一人で撮っていたので、それも合わせると1年半くらいですね。もちろん1年半ずっと撮っていたわけではなく、一関のみなさんの都合が合う日に撮影させてもらっていました。


みなさん忙しいので、とにかくスケジュールが合わないんです。ユナちゃんとシホちゃんは中学生だし当然勉強優先なんですが、神楽の踊りも含めて地域行事を手伝っているんです。また、田植えの時期は人が出払っていて誰もいなかったり、カメラマンの広川さんのスケジュールもあるので、タイミングが合う日がなかなか無かったですね。仕事でやっているのではないので、しょうがないですよね。


一週間後のこの日とこの日なら撮影できますよ。って連絡をいただくと、それを逃すことはできないので、東京の自分の仕事は休まざるを得ない状況でしたね。


Q:その1年半を通して撮影した後は、振り返るとどうでしたか。


小松:振り返る暇なくて(笑)。素材が膨大にあるので、とにかく画を繋ぐのに必死でしたね。


先ほどお話ししたように、こちらでコントロールしつつも、出演者の皆さんに自由にやっていただいた部分が大きかったので、意図した画が撮れないことが多々ありました。そうなると、脚本があってないようなもので、どんどん辻褄が合わなくなってくる。撮影をしながら、並行して脚本を書き直す必要に迫られたんです。そうして脚本が変わると撮影する内容も変わっていく。これはもう大変でしたね。




Q:そうなると、もはやイタチごっこですね。現場はかなり混乱したのでは無いでしょうか。


小松:そうです。だから、もう普通の撮影ではない。みんなも何を撮っているか分からなくなってくるんです。時間的制限もあって余裕のない撮影なので、途中から、急遽絵コンテを作ることにしました。撮影が終わって宿に帰ると、とにかく明日撮る内容をコンテに描いていくんです。その日撮った内容を踏まえて、何を撮れば成立するのか、もう晩御飯も食べずに必死に描いていましたね。朝3時とか4時くらいまでにそれを仕上げて、朝5時出発のロケバスの中で、今日はこういうシーンが必要になりましたって説明して、そこから1日が始まるんです。


Q:それは大変ですね…。及川さんからみて、撮影中の小松さんはいかがでしたか。


及川:僕自身がそれほど撮影に行けなかったこともあり、また、出版の人間なので、映像のお作法が全然分かっておらず、今回は相当大変なことをやっていたんだと、後から知りました。


今回はスタッフもキャストも特殊なチーム編成だったし、テーマとしてもそういう新しい手法で撮ろうとしている。加えてスケジュールや場所の問題など、制約だらけの中で、小松監督には本当に頑張っていただいたと思います。


夜中にビジネスホテルの部屋に篭って、機を織るようにコンテを描いてもらっていたので、見えない部分での苦労もあるんですよね。その辺も後から聞いて驚きましたね。



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