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  3. 映画って、いろんな人の手が入るから面白いと思うんです『君が世界のはじまり』原作/監督:ふくだももこ×脚本:向井康介【Director’s Interview Vol.71】
映画って、いろんな人の手が入るから面白いと思うんです『君が世界のはじまり』原作/監督:ふくだももこ×脚本:向井康介【Director’s Interview Vol.71】

映画って、いろんな人の手が入るから面白いと思うんです『君が世界のはじまり』原作/監督:ふくだももこ×脚本:向井康介【Director’s Interview Vol.71】

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違う世代が一緒に描く青春



Q:脚本を作る際には、お二人でのやり取りは結構あったんでしょうか。


向井:よく飲んで話しましたね。キャスティングの話もしましたし、ふくださんからは、「脚本にもっとオリジナルの要素を入れてください」って言われました。「もっと好き勝手やってくれていいです」って。


Q:それは意外ですね。


向井:いやもうちょっと原作を尊重してやろうよって、逆に俺が言うみたいな感じになってましたね(笑)。


Q:自分が書いた原作を監督して映画化しようという時に、話の内容を他の人の手に委ねるというのは、なかなか勇気がいるのではないかと思うのですが。


ふくだ:映画って、いろんな人の手が入るから面白いと思うんです。ちょうど学生時代の自分のマインドから、ちょっと変わってきていた時期だったこともあって、気持ち的にも受け入れられたのかもしれません。でも、とにかく脚本が面白かったからですね。面白くなかったら嫌だったかもしれませんね。


向井:自分で脚本書かなかったのは、この作品が初めてだよね。


ふくだ:そうですね。今回はすごく勉強になったし、プロの脚本家って凄いんだなって感じました。自分の原作をこんな形で脚本化してもらえる機会って、なかなかないと思うから、単純に嬉しかったです。




Q:向井さんは40歳を超えて、青春映画はもう書かないと決めていたそうですが、今回も素晴らしい青春映画になっていました。これまでのお話を伺っていると、主人公たちに近い年代のふくださんが、若い子たちのマインドの部分をしっかり抑え、向井さんは俯瞰的な立ち位置で映画的構成を築く、というふうに、お二人の中でしっかり棲み分けができているように感じました。


向井:なんかそうなんですよね。今回は、ブルーハーツ繋がりということもあり、よく引き合いに出されるのが『リンダリンダリンダ』(05)なんですけど、あれやってた頃は自分が27~8歳なんですよ。ちょうど今、ふくださんと同じくらいの年齢ですね。あの頃の自分って、全然まだ何者でもなくて。とにかく業界の人に認められたい一心でしたね。


俺たちみたいなのが映画作ってんだって、俺たちみたいなのがいるんだぞって、とにかく業界で認められたくて、観客のことは一切考えてなかったんです。でも今回は真逆でした。


今回は、業界の人とかはどうでもよくて、今の若い子達や、この作品を見てみたいと思ってくれた人たちに、とにかく劇場に来て欲しいなと。自分でも考え方がすごく変わったなって思いましたね。これが老けるってことなんですかね(笑)。


また、デジタルネイティブと言われる、今の若い子たちの人間関係の築き方って、自分たちの世代と全く違うじゃないですか。だから、今の青春を描くのは無理だろうなって思ってたんです。でも、この原作を読んだら、舞台が大阪の田舎で、わりと土着的な人間関係が描かれている。ショッピングモールで暇つぶしをしている若い子たちの日常があって、これなら出てくる子たちの気持ちが分かると思ったんですよね。


「これだったら共感しながら書けます!」って、佐々木さんに言ったのを覚えています。ふくださんと自分との年齢差がギリギリセーフだったのかもしれませんね。


Q:『リンダリンダリンダ』も『君が世界のはじまり』も、女子高校生、ブルーハーツと同じ共通点がありながら、その時代の空気がそれぞれの作品に漂っている感じがします。今回の場合は、それはふくだ監督によるものが大きいのかなと思いました。


向井:そうですね。これはふくだ監督と山下くんの作家性の違いでしょうね。ブルーハーツということに関して言えば、自分たちはリアルタイムだったんですが、熱狂する人たちを横で見て、なかなか乗り切れなかったんですよね。一方でふくださんたちは、多分後追いで知りつつ、素直にいいものはいいって言えるような距離感があったのかなと思います。



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