変わりつつある、日本人のホラー嗜好
Q:先ほどの『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』のお話もそうですが、たとえばここ数年~10年で、日本人のホラーに対する嗜好は変わってきているとお考えですか?
中田:そう思いますね。転換期といえるのは、ハロウィンが日本にも定着したことじゃないかな。アメリカでは当たり前の風習ですが、日本でも20~30代の大人と、その子どもたちには非常に親しまれるようになった。「とうとう来たか」と思いましたね。
僕がアメリカにいたころは、貞子やサマラ(ハリウッド版『リング』の貞子)の仮装をしている人もいて、あれこそ「ホラーを能動的に楽しんじゃおう」精神の表れだと感じます。もともとは日本でいうところの「お盆」のような、あの世とこの世を通じさせる位置づけのものだったけれど、今や仮装イベント化している。
ゾンビ映画も、僕らがJホラーをスタートしたときは日本にまだ根付いてなかったですよね。西洋的な縁遠いものという認識だったのが、ハロウィンと同じく“普通”のものになってきている。
能動的にホラー映画を楽しむ日本人が増えてきた時代に、たとえ実際の事故物件がそうだとしても「天井のシミが怖い」だけだと今の若い人の感覚では地味すぎるだろう、という思いはありました。
Q:そういった“感覚”や“意図”は、亀梨和也さんほか出演者とも共有されたのでしょうか。
中田:亀梨和也くんにも「じめっとして怖いよりも、もっとポップなものを狙いに行きます」ということは、はっきり伝えましたね。
瀬戸康史くんには、ビジュアル面でも協力してもらっています。彼は、実は「見える」人なんですよ。実家にいるときは白い人影を見て、上京してからは黒い人影を見たというから、どんな風に見えるのか描いてもらいました。
そうした“本物”にも寄せながら、今まで観たことのない、新しい切り口を模索していきました。いつも一緒にやっているスタッフが「久々に『面白くて怖い』映画になりましたね」と言ってくれたことを覚えています。久々って随分だな、とは思いましたけど。(笑)
僕は今までも、ホラーマニアにだけ向けて映画を作って来たわけではないし、間口は広くしていきたいなと思っています。