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  3. 映画とは政治的・社会的参加であるべき。『マーティン・エデン』ピエトロ・マルチェッロ監督【Director’s Interview Vol.77】
映画とは政治的・社会的参加であるべき。『マーティン・エデン』ピエトロ・マルチェッロ監督【Director’s Interview Vol.77】

映画とは政治的・社会的参加であるべき。『マーティン・エデン』ピエトロ・マルチェッロ監督【Director’s Interview Vol.77】

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労働者階級出身ながら、幾多の試練を乗り越え、20世紀アメリカ文学の大作家となったジャック・ロンドン。自身の自伝的小説「マーティン・イーデン」が、舞台をイタリアに移して映画化。主演のルカ・マリネッリは『ジョーカー』(19)のホアキン・フェニックスを抑えて、第76回ヴェネチア国際映画祭で男優賞を獲得するなど、映画は幾多の賞を受賞。メガホンを取ったのは、ドキュメンタリー映画で数多くの賞に輝いてきたピエトロ・マルチェッロ監督。アメリカ文学の巨編を、実験的精神に溢れた手法で映画化した監督に話を伺った。


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大衆的な映画に実験的要素を同居させる



Q:原作の舞台アメリカからイタリアに置き換えて映画化した理由を教えてください。


ピエトロ:私はイタリア人でアメリカのことをよく知らなかった。というのが大きな理由ですね。マーティン・エデンは、文化を通して世界に復讐していく人間ですが、それはある種のメタファーなんです。原作の「マーティン・エデン」は普遍的な物語なので、ある意味どこでも撮ることが出来るんです。多分東京でも撮れますよ。


また、イタリアは海に面した国ということもあり、私たちが作る『マーティン・エデン』は、海の男の設定にしています。


Q:戦前のイタリアを舞台に階級闘争を描いた映画は、ベルトリッチの『暗殺の森』(72)など、様々な傑作があるかと思います。この作品も同じく階級闘争を描いており、そしてそれはまさに今の世界の潮流を描いているようでした。過去の作品や現代社会の実情を意識されたりはしましたか?


ピエトロ:この映画は、20世紀という一つの時代を駆け抜ける人間の話にしたかったんです。ただし、エピローグの部分では現代の話にしています。というのも、「マーティン・エデン」は、非常に現代的な人物像として描かれているからです。彼は今の文化産業に振り回された人間なんですよ。




また、この作品はドキュメンタリーに近い撮り方をしています。過去の記録映像を入れたりすることで、実験的な部分も持ち合わせた作品になっているかと思います。『暗殺の森』は非常に素晴らしい作品ですが、本作とは全く別の撮り方をしており、私自身も(暗殺の森を)特に意識はしていませんでした。


Q:撮影に16mmフィルムを使用されていて、非常にクラシックなルックになっていますが、時代を飛び越える構成だったり、先述された、記録映像との融合やドキュメンタリータッチでの撮影など、実験的手法も多く併せ持っています。これらをこの映画に取り入れた意図を教えてください。


ピエトロ:昔の記録映像と劇映画を同居させることは、最初から考えていました。大衆的な映画と実験的なものを同居させようというのが狙いです。


メソッドを選んで撮るのが、いつもの自分のやり方なんです。何かモデルがあって、それに近いものを撮ろうとしたことは今までありません。今回は自分がプロデューサーも兼任したので、この作品では特にやりたいことが出来ましたね。大きな挑戦が出来たと思います。



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