印象的なキャラクターたち
Q:凪沙と一果の関係性に加えて、一果と友人のりんの関係性もとても印象的で、物語の大きな軸として機能しているように感じました。
内田:一果とりんのエピソードは本当はもっといっぱいあるんです。尺の都合でたくさんカットせざるを得ませんでしたが、本当はあの二人だけで一本映画が撮れるくらいのボリュームで脚本を書いてます。
バレエを通して、なりたいものになっていく一果には、“希望”を象徴させています。一方でりんは、バレエへの気持ちを抑えて不幸になっていってしまう。りんには、今の世の中の(ネガティブな)雰囲気を背負わせたんです。
負の部分は全部りんが背負ってしまったので、演じた上野鈴華さんは大変だったと思います。配役もすごく難航しまして、すんなり決まった一果に対して、りん役はなかなか決まらず、やっと決まった上野さんはバレエもそんなに経験なかったんです。実際に一果と比べられる役ですし、結構つらい中で演じていたと思いますね。
Q:水川あさみさん演じる一果のお母さん・早織も印象的でした。育児放棄する母親役と言いつつも、悪い人間と決めつけない点が意外でした。
内田:悪い母親としてベタに描くことは絶対にやりたくなかったですね。ここも尺の都合でバッサリカットしてしまいましたが、シングルマザーに対する社会的保障の問題など、彼女たちが抱えている複雑な問題を描くシーンも最初はあったんです。
今は一果を殴ってしまっているが、早織にもいいお母さんだった時代はあって、ちゃんと愛情はあるんだという風に描きたかったですね。
暴力シーンをはじめとして、水川さんが思った以上にリアルに演じてくれたので、そこの印象は強烈ですけどね。水川さんの演技は本当に素晴らしかったです。
Q:母親としてのリアリティーがあるからこそ、一果を巡っての凪沙との対決シーンが凄く際立っていました。
内田:観ている人によっては、なぜ一果は母親に寄っていくのかという意見もありましたが、子供と母親ってそういうものだと思うんですよね。母親の方も、育児放棄しているとはいえ子供を愛してはいるわけですから。