各界から絶賛コメントが相次ぐ、映画『ミッドナイトスワン』。トランスジェンダーを演じた草彅剛の凄まじいまでの演技に加えて、相手役を担った演技未経験の新人、服部樹咲の存在感も圧倒的。そして何より映画として非常に面白く、鑑賞後は満足感に包まれること必至だ。本作は脚本も手がけた内田英治監督のオリジナル。オリジナル作品の成立が難しいと言われる日本映画界において、内田監督はどうやってこの傑作を生み出したのか?直接話を伺った。
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オリジナル作品である理由
Q:『ミッドナイトスワン』完成度がすごく高くて、監督の気概がスクリーンからビシビシ伝わってきました。映画が完成した今どんなお気持ちでしょうか。
内田:このコロナ禍で、色々と不安があるのが正直なところですね。実は海外で撮影する予定のシーンもあったのですが、コロナの影響でロケに行けず、撮影も4~5ヶ月ストップしていました。
ただでさえ人が入らなさそうな映画なんですが(笑)、もうちょっと世の中が多様的になればいいなと思って作ったので、少しでも多くの方に観て欲しいですね。
Q:今回は草彅剛さんが主演で、全国のシネコンで流れるメジャー作品です。これまでの内田作品からすると、上映規模がかなり広がりますね。
内田:やっぱりこういう内容の映画だと、いわゆるインディーズシーンで活躍する役者さんが主演になりがちなのですが、それを今回、草彅剛さんがやってくれたのはすごく新しいなと思います。
海外って、ハリウッドスターがインデペンデントを応援する状況があると思いますが、今回の流れはそれに近いなと思っています。僕自身がインディーズとメジャーの融合を目指していまして、今回はまさにその一作目として、すごく力を入れて撮りました。
日本の場合はインディーズとメジャーが両極端で、ちょうどその中間みたいなものがないんです。アメリカのA24みたいに、インディーズとメジャーの中間くらいの映画が、日本でもどんどん作られるといいなと。
Q:メジャーに近づくほど、オリジナルで企画を通すのは難しいのではないかと思います。内田監督の作品を振り返ると、本作も含めて比較的オリジナル作品が多い印象がありますが、オリジナルにこだわる理由と、それを実現させる秘訣を教えてください。
内田:僕は助監督経験がなくて、「週刊プレイボーイ」で雑誌のライターを11年間やっていました。基本的に書くのが好きなんですね。脚本家も2年間やっていて、自主映画を作るというよりは、ストーリーばっかり書いていたんです。そんな流れもあって、映画制作においては、脚本とキャスティングの2つにすごく重きを置いているんです。そういう意味で、やっぱり自分のオリジナルストーリーというのは大事にしたいですね。
あとは企画を通すにあたって、オリジナルを書いている人は強いですよね。まず、企画から降ろされない(笑)。
Q:なるほど。
内田:これ、日本においてはメチャメチャ大事です。他の人が書いたものとなると、ちょっとプロデューサーに楯突いたら、クビになりそうじゃないですか(笑)。基本が自分のオリジナルで、ちゃんと企画と向き合えるのはとても大きいですよね。
もちろん原作モノも面白くて、大好きな原作はいっぱいあるんですが、この面白い話を書いてるのは、俺じゃないんだなと思うと、ちょっぴり悔しかったりします。原作がマンガの場合だと、カット割りまで存在する。これは本当に悔しいですよね。
また、海外の映画祭を視野に入れると、日本だけで受けるものだとなかなか厳しいなと。オリジナルで、ある程度海外も視野に入れたストーリーとなると、自分で書く必要がある。
来年も新しい映画をやるんですが、それもオリジナルです。でも、オリジナルオリジナルってばかり言っていると、仕事が来なくなるので、原作モノもちゃんとやります!とここでちゃんと言っておきます(笑)。