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『おもかげ』ロドリゴ・ソロゴイェン監督 映画館に行って映画文化を皆で支えてほしい【Director's Interview Vol.88】

『おもかげ』ロドリゴ・ソロゴイェン監督 映画館に行って映画文化を皆で支えてほしい【Director's Interview Vol.88】

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シンボルとしての海



Q:舞台を「海」にしたことの意味はありますか。日本には「母なる海」「生命の源」というニュアンスがありますが、同じ認識でしょうか。


ロドリゴ:海は非常に大切な要素だね。ただ面白いことに短編映画「Madre」では海が映っていないんだ。勿論最初と最後だけワンカットで映ってはいるけれど、観客が見ているのはあくまでマドリード。マドリードには海がないんだけれど、そのアパートの風景をみていて、子供の会話から海ではないビーチの風景を、観客は思い描いている。空と大地と海がある、その風景を観客は思い浮かべているんだ。


この短編が出発点なんだけど、いざ長編になったときは、シンボルとしての海の強さは大事だと思った。もちろん海は母性でもあるけれど、ただ同時に海というのは危険で、死をイメージしている。実際に映画に出てきたフランスのこのヴュー=ブコー=レ=バンの海岸は、荒れ狂う海ということで有名で、(息子の)イバンがどうなったのかは映画の中では一切語っていないけれど、海がひとつのヒントになっているんだ。




もしかすると、海は息子の死あるいは失踪と直接的な意味合いがあると感じ取ることもできるし、それと同時に母性とも繋がっている。この海によって映画の中では新しいエレナが生まれている。新しい愛が生まれる物語として、海がシンボルとして常に表れていることが大切だと思ったんだ。


Q:日本のクリエイターやアーティストで、好きな人はいますか。


ロドリゴ:映画作家でずっと好きなのは、ポール・トーマス・アンダーソン。日本人では言うまでもなく、巨匠・黒澤明、彼は天才だよね。最近の監督だと是枝裕和に注目している。彼は非常にセンシティブだと思うね。上手くヨーロッパ文化にアプローチしていて、深く理解したうえで、その中にまぎれもなく東洋の心を表現する映画を作っていると思うよ。


Q:最後に日本の観客へメッセージをお願いします。


ロドリゴ:ぜひ私の映画を観てほしいし、そのために映画館へ足を運んでほしい。でもそれだけではなく、映画館で沢山の映画を観てほしい。今は本当に、映画の文化を皆で支えなければならない時期に来ている。文化から学び、文化で自分を成長させることが必要なんだ。そこからより深い知恵を持つことができてこそ、人々は自由になっていくのだから。



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監督・脚本:ロドリゴ・ソロゴイェン

1981年スペイン、マドリード生まれ。マドリード映画撮影・視聴覚芸術学校(ECAM)で脚本を学び、テレビシリーズの脚本家としてキャリアを開始。25歳の時、初の長編映画「8 citas」を共同監督。制作会社Isla de Babelで、テレビシリーズ「Impares」「La pecera de Eva」「Fragiles」などの脚本および監督を担当。2011年、3人のパートナーとCaballo Filmsを設立。共同監督作品「Stockholm」でマラガ映画祭の監督賞と脚本賞、フェロス賞作品賞ほか多数受賞。長編3作目『ゴッド・セイブ・アス マドリード連続老女強姦殺人事件』では、サン・セバスティアン国際映画祭の脚本賞を受賞した。本作のベースとなった短編「Madre」は、トロント国際映画祭ほか主要な国際映画祭に出品され、マラガ映画祭観客賞、ホセ・マリア・フォルケ賞とゴヤ賞短編映画賞、ヴィラ・デ・ラ・オロタバ短編映画祭などスペイン内外の映画祭で50以上もの賞を獲得。第91回アカデミー賞®短編実写映画賞にノミネートされた。長編4作目「The Realm」は、ゴヤ賞監督賞、脚本賞を獲得。本作では、2019年のヴェネチア国際映画祭オリゾンティ部門に選出され、高い評価を得た。



構成:CINEMORE編集部 




『おもかげ』

10/23(金)シネスイッチ銀座、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国ロードショー

公式サイト:omokage-movie.jp

(c)Manolo Pavón

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