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賞金稼ぎボバ・フェットの歩み【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.50】

賞金稼ぎボバ・フェットの歩み【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.50】

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映画よりも前に登場した賞金稼ぎ





 白い物を塗る。これがシンプルなようでいて試行錯誤の繰り返しだったようだ。むしろ出発が白だからこそ選択肢が多岐に渡ったことだろう。ジョンストンと、彼を手伝ったサンディ・ドゥイフェッターは全部で6つのヘルメットを塗ることになり、その全てが少しずつ違う色味となった。試作段階の衣装はプリプロダクション版(プリプロ版)と呼ばれ、3段階を経て完成へと繋がっていくが、その最初のものとなるプリプロ1の衣装が、早くも人々の前にお披露目されることになる。1978年9月にカリフォルニアはサン・アンセルモのカントリー・フェア・パレードに謎の新キャラとして登場したのだ。


 ダース・ヴェイダーの隣で歩くその姿から、すでにこのキャラクターの立ち位置や役割は確定していたと伺える。これがボバ・フェットが初めて人々の前に現れた瞬間だった。とても暑い日で、誰も知らない衣装の中で汗だくになっていたのは、ルーカスフィルムでフィルム編集に携わっていたドゥウェイン・ダナムである。プリプロ版の衣装の特徴は映画で見られる姿よりも少し色彩が違うところだが、プリプロ1のヘルメットは額のところに「目」(「耳」とも)と呼ばれるマークが入っているのもポイントだ。


 同年11月にはテレビ特番『ホリデー・スペシャル』が放送され、マーク・ハミルにキャリー・フィッシャー、ハリソン・フォードらメインキャストが出演する中、間に挿入されたアニメ・パートにボバ・フェットが登場し、これが映像へと初登場となった。登場時は謎の人物ながらどうやらヒーローたちを助けてくれるらしいというそぶりを見せるのだが、実はダース・ヴェイダーと通じていて……という具合に『帝国の逆襲』への登場に備えたちょっとした紹介のようになっている。なかなかおもしろい絵柄で展開されるアニメで、ボバの色彩は映画ともプリプロ版とも異なるカラーだが、担当アニメーターのジョン・セレストリによれば、ルーカスからメビウスという名でも知られるフランスのアーティスト、ジャン・ジローのようなスタイルを依頼されたらしく、水色と黄色で構成されたボバの色彩も、メビウス的なカラーリングを意識してのことだそうだ。確かにキャラクターの体に書き込まれる陰影の線や、惑星の地表がピンク色だったりとそれらしい雰囲気はある。同時期に衣装の方でも色彩を模索していたことを考えれば、アニメはアニメでやはり白いバージョンから出発して独自に配色を検討する必要もあったのだろう。1978年はボバ・フェット史においてかなり慌ただしく濃密で、重要な年だったようだ。


 パレードとアニメによって、新しいキャラクターは人々の知るところとなった。こうして1979年にはシリーズの玩具全般を扱うケナー社からボバ・フェットのアクション・フィギュアが登場する。このフィギュアの色彩もまた独特のものだが、これは前述のプリプロ版を参考に制作されたものなので、ブルーを基調にした全身にガントレットが左右で黄色と赤といった配色になっている。色数の多いプリプロ版も好きだが、こちらのフィギュアは初期のケナーにおけるおもちゃっぽさも手伝ってとてもかわいらしい。


 プリプロ版も3タイプ目の塗装に進んでおり、まだガントレットなどに違いはあるがヘルメットに関しては『帝国の逆襲』にぐっと近づいた。ちなみにプリプロ2が最も多く写真が残っており、しっかりしたスチール写真にまで進んでいることがわかる。これらのプロトタイプたちを見ていて感じられるのは、ジョンストンらの塗装へのこだわりである。色味はもちろんだが、ボバの特徴でもある汚れや傷、剥げの具合なども繰り返し施されたことだろう。ジョンストンとともに制作に当たったドゥイフェッターは塗装以外にもアクセサリー面も作り込みにも気を配った。「Boba Fett Fan Club」のインタビューによれば、衣装にリアリティを持たせるためにミリタリー・ショップで集めたベルトや防水シートといった小物を利用したそうで、ボバが右肩からさげている毛の束(かつては殺したウーキーの毛皮だという設定もあった)は彼女が入手して編んだ馬の尻尾の毛だという。


 このように最強のバウンティ・ハンターの衣装は短い期間で何通りも制作され、ディテールへのこだわりがあの異様な立ち姿を完成させたのである。



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