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絵に描いた映画としての『アイアン・ジャイアント』【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.44】

絵に描いた映画としての『アイアン・ジャイアント』【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.44】

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異物なのに親しみやすい巨大ロボット



 前回はジョー・ジョンストン監督作『ロケッティア』における『アイアンマン』っぽさなどをこじつけて紹介したけれど、ジョンストンはまさに「アイアン」とつくキャラクターのデザインにも関わっていたりする。それがブラッド・バード監督による長編アニメーション映画『アイアン・ジャイアント』のタイトルロールである巨大なロボットである。


 1957年、ソビエト連邦による史上初の人工衛星打ち上げが成功した10月。メイン州の小さな港町で暮らす少年ホーガースは、森の中で巨大なロボットを発見する。少し前に沖合で謎の物体の降下や怪光線などが目撃されたばかりで、どう考えても怪しいロボットなのだが、中身は幼い子どものように無垢。父を朝鮮戦争で亡くし、一緒に暮らす母も夜遅くまでダイナーで働いて家を空けがちという孤独なホーガースは、このロボットを友達にしようと決めるのだが……。


 逆三角形のボディに長い手足、親しみやすい丸い目。怪獣のように大きいというだけで見た目はどこかおもちゃのような印象で、懐かしい雰囲気のロボットだ。どこか鉄人28号とウルトラマンを合わせたような感じもするが、ぼくが特に好きなのはボディのあちこちにたくさんボルトが打ってあるところ。ボルトやネジ、鋲といったものが打たれているロボットはどこか手作り感があってかわいらしい(前回の『ロケッティア』でもジェットパックに鋲が打たれているところがよかった)。またボルトが締められているということは、これが金属で出来た生き物ではなく、造られたものであることを示しているわけで、わりとこの物語において重要な点でもあると思う。


 50年代という時代感もノスタルジックな雰囲気のロボットによく合っている。合いながらも、明らかに異物でもあることが際立っているからおもしろい。一見古典的な平面のアニメーションの中にあって、ロボットがCGで描かれているところもその所以だろう。CGでありながら、トゥーン・レンダリングという平面アニメ風に仕上げる技法を取っているので、ほかのアニメーション部分とうまく調和を取って馴染んでいるのだ。そのためアイアン・ジャイアントが派手なアクションを取っても作画は一切崩れない。生き生きとしゃべったり動いたりするホーガースに対し、きっちりきっちりと動くので、まさに金属で出来た人工物としての動きになるというわけだ。


 異物でありながらも周囲に溶け込み、それでもやはり異質なインパクトは持っている。アイアン・ジャイアントの描画方法はそのキャラクター性とぴったり一致しているのだと思う。『トイ・ストーリー』はすでに公開しており、かのジャー・ジャー・ビンクスも直前にスクリーンデビューを果たしているものの、まだまだCGが若かった時代。お馴染みのアニメーションを効果的に支える役割としてCGを取り入れているところがクールだ。


 ブラッド・バードはのちにディズニーの『トゥモローランド』を監督するが、そこではジョンストンの『ロケッティア』と同様、夢のガジェットたるジェットパックに見せ場が作られていたりもする。ジョンストンやバードが描くレトロフューチャーには心を奪われっぱなしである。



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