『横道世之介』のスタッフでやりたかった
Q:現場の田中裕子さんはどうでしたか。
西宮:いつも穏やかで、和やかな雰囲気を作ってくださいました。ただ、ほぼ出ずっぱりの役なので、撮影がある限り田中さんもお休みできない。翌日も朝からだから、撮影時間があまり長くならないよう頑張ろう、みたいな感じで、スタッフもみんな、自然と気を引き締めて現場に臨んでいたように思います。
Q:今まで田中さんは、数々の巨匠たちと仕事してきてますしね。
西ヶ谷:東映撮影所で田中裕子さん主演の映画を撮るぞって考えた時の、我々スタッフの緊張たるや。
西宮:衣裳合わせを大事にされると伺ったので、みんな緊張していたのですが、衣裳の纐纈春樹さんが用意してくれた桃子さんの衣裳が、田中さんのイメージされていたものと合致していたようで、そこからなんとなく一体感が出てきたように思います。
Q:カメラマンの近藤龍人さんなど、スタッフはいつもの沖田組という感じでしょうか。
西ヶ谷:今回は『横道世之介』(13)のスタッフでやりたいって、竹内さんから明確に言われていたんです。
西宮:撮影、照明、美術、録音、編集、衣裳、メイク、助監督、VFXと、メインスタッフはほぼ『横道世之介』のスタッフです。『横道世之介』も、過去と現在で時代が交差する構成なのですが、音の演出がすごくよかったんです。そういう意味でも今回の録音は、矢野正人さんにぜひお願いしたいねっていうのがありました。
西ヶ谷:主演が田中裕子さんということもあり、録音部は矢野さんクラスのベテランにやってほしいっていうのもありましたね。
Q:主演女優と録音部の関係というのは?
西ヶ谷:現場ではマイクが一番近づきますから。
Q:なるほど。
西ヶ谷:もちろんお芝居の邪魔になってはダメですし、ピンマイクをちゃんと付けてもらわないといけない。やはりそこは経験値の高い人でいてほしいと。また、矢野さんと久しぶりにやってみたいというのもありましたね。
Q:沖田監督にもお伝えしましたが、美術がまたいいですよね。美術の安宅紀史さんと沖田さんはよく組まれるんですよね。
西宮:安宅さんの美術は最高ですよね。
Q:『南極料理人』も『モリのいる場所』も、今回の『おらおらでひとりいぐも』も、映画はもちろんですが、美術がすごくいいなと思いました。
西ヶ谷:考えて見たら沖田監督の美術はほぼ安宅さんですね。
西宮:安宅さん大好きですよね。隅々まで抜かりがないので、俳優さんたちもやりやすいんじゃないかなと思います。『モリのいる場所』の感じもよかったですよね。モリの家を見つけてきた制作部さんもすごいと思いました。