人間関係の制約=「リミット」で作り出す精神的な密室
Q:今回の2作品は密室から出たくても出られない人のお話ですが、物理的な密室ではなく、精神的に他者に縛られてしまって出られない、ちょっと不条理な展開が印象的です。ああいうお話はどういうアプローチで書かれるんでしょうか。
岩崎:僕はやっぱり人間を書くのが好きで、得意なタイプだと思うんです。だから、人間関係による制約=リミットという方向の発想ですね。僕が出演もしている『ユニットバスの2人』はまさにそう。
浮気している芸人の所に泥棒が入ってくる。浮気男としては、警察に通報すると帰れなくなってしまう。そんな時、人はどうするのかな、という。それはコント的な発想なんですけど。
Q:『ユニットバスの2人』では岩崎さんが演じる泥棒が最初は低姿勢なんどけど、だんだん立場が逆転していくのが面白いですね。
岩崎:芸人は浮気現場に警察を呼ぶのか呼ばないのか悩みつつ、わずかな間に決断をしていかなければいけない。泥棒には失うものはないので、下手に扱うと何をしでかすか分からない、爆弾みたいなもんですよね。それをなだめすかして出ていかせようとする。
本来、ただ泥棒に「家から出ていけ」という簡単なはずのミッションが、芸人には足元の脆さもあり、すごく難しいことになっていく、というのが面白いかなと。
Q:基本は2人芝居ですが、セリフで工夫されたことはありましたか。
岩崎:セリフは現場で結構変わっていましたね。一場面劇だから、似たようなセリフがいっぱい出てくるんですよ。特に押し問答じゃないですか、「帰る」「帰らない」「帰ってください」って言う。芸人側としては、どうしても「帰ってください」しか言えないという。
Q:(笑)確かに選択肢があまりないですよね。
岩崎:そう、変なこと言ったら引火して、余計な爆発を起こすかもしれない。とにかく低姿勢でいくしかしかない。だからキャラクターが、コロコロ変わる人じゃないと、ずっと同じ話になってしまう。
リミットっていう限定状況のストーリーを成立させるために、キャラクターの造形を決めていった所はありますね。