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『花束みたいな恋をした』土井裕泰監督の“映画に挑む覚悟”を変えた、脚本家・坂元裕二の存在【Director's Interview Vol.103】

『花束みたいな恋をした』土井裕泰監督の“映画に挑む覚悟”を変えた、脚本家・坂元裕二の存在【Director's Interview Vol.103】

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人気ドラマ『カルテット』(17)の脚本家・坂元裕二と土井裕泰監督が、映画の世界で再び組み、菅田将暉と有村架純が出演する――。『花束みたいな恋をした』(1月29日公開)は、2021年の日本映画の目玉として、早い段階から熱視線を浴びていた作品だ。


東京・京王線明大前駅で偶然に出会った、大学生の麦(菅田将暉)と絹(有村架純)。終電を逃したふたりは、飲み屋で時間をつぶすうちに好きな本や映画、音楽、考え方や癖が共通することを知り、一気に恋に落ちる。ほどなくして同棲を始め、幸せな日々が続いていたが、麦が就職したことから少しずつ生活リズムや価値観にすれ違いが生じていく――。


2015年から2020年を舞台に、当時のカルチャーをふんだんに盛り込んだ本作は、多くの人々が“自分事”と思ってしまうようなリアリティに満ちている。恋に浮き立ち、悩み、切なさを抱え――。ハッとさせられる名セリフの数々に、繊細ながらも切実さが漂う真摯な演技、寄り添うような温かみあふれる演出。ラブストーリーの新たな傑作であり、いまを生きる“私たちの物語”として、多くの人々の心に刻まれることだろう。


今回は、土井裕泰監督に単独インタビュー。『逃げるは恥だが役に立つ』(16)、『カルテット』、『凪のお暇』(19)といった人気ドラマ、『映画 ビリギャル』(15)、『罪の声』(20)などのヒット映画を次々に手がけてきた彼が、本作で「宿命から解き放たれた」と語った理由とは?


Index


「おじさんのノスタルジー」を入れないように心がけた



Q:『花束みたいな恋をした』、涙なしには観られない作品でした。自分の生活圏内と重なっている部分もありますが、他人事と思えないリアリティがありました。


土井:うれしいです。ありがとうございます。


Q:『罪の声』と両方並べて観た際の“違い”も、興味深かったです。ここまで演出を変えられるものなのかと、改めて土井監督の引き出しの多さに驚かされました。


土井:『罪の声』は非常に複雑な構造の話で、時代も場所もものすごくたくさんの層があるため、最終的に観客をどう“真相”に導いていくのか、ある意味テクニカルに演出を考えなければならない作品でしたね。


それに対して、『花束みたいな恋をした』は、もともと坂元裕二さんの脚本がほぼ日記のような形で書かれていることもあって、そういったテクニカルな部分をあえて抜くと言いますか、日々の一つひとつをちゃんと積み重ねていく、という意識で作っていきました。あとはやはり、「おじさんのノスタルジー」みたいなものを投影しないようには心がけましたね。



(c)2021『花束みたいな恋をした』製作委員会


Q:いまの感覚から、昔を懐かしんでしまうようなニュアンスでしょうか。


土井:そうですね。僕自身も50代ですが、おじさんの撮った青春映画や恋愛映画って、どこかちょっとわかるじゃないですか(笑)。


そうじゃなくて、本当にただただ人をニュートラルに見つめ続ける、という意識で作りたいと思ったんです。菅田将暉くんと有村架純さんという、いまの時代の表現者のトップランナーたちと、坂元さんの言葉と……。そのふたつが合わされば、そこにドラマがちゃんと生まれるということを信じて作っていきましたし、信じられる方たちだったということは大きいですね。


Q:いまお話しいただいた「人の営みを真摯に見つめる」という部分、たとえば「歩く」という描写にも表れているように感じました。明大前駅で終電を逃した麦と絹が一緒に歩いたり、同棲し始めてからも川沿いを30分かけて一緒に帰ったりと、観る側と一緒に「経験」していくシーンが、要所に用意されていますよね。


土井:やっぱり、「実際の場所で歩く」という空気の中で生まれてくるものって、ありますよね。明大前駅から甲州街道を通って調布まで歩いていく、深夜から明け方にかけての時間帯、という空気感は嘘がつけない。そういったシーンから、にじんでくるリアリティは確実にあると思います。



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