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『花束みたいな恋をした』土井裕泰監督の“映画に挑む覚悟”を変えた、脚本家・坂元裕二の存在【Director's Interview Vol.103】

『花束みたいな恋をした』土井裕泰監督の“映画に挑む覚悟”を変えた、脚本家・坂元裕二の存在【Director's Interview Vol.103】

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劇中に登場する映画は、脚本に明記されていた



Q:また、人を描く上で、「部屋」も非常に効いていると感じました。麦の部屋に来た絹が「ほぼうちの本棚じゃん」と言うシーンも印象的ですし、同棲し始めてから、多くのドラマが家の中で起こる。その空間自体に彼らの趣味や生活感がいかんなく織り込まれているからこそ、観客はぐっと入り込むことができます。


土井:おっしゃる通り、美術も含めて、細部にはとにかく気を遣って作っていきました。本の1冊1冊や、その並び方……。これだけ固有名詞に満ちた物語も珍しいですし、本当に細部をおろそかにできない作品でしたね。2015年から2020年を生きた人たちをリアルに描くため、各スタッフが徹底して手を抜かずに取り組んでくれました。


2人が暮らすマンションに関しては、台本上に「調布駅から歩いて30分の多摩川が見える部屋」と具体的に描かれていたので、映画の準備段階で、まずその場所を探しました。ただ実際にはなかなか難しかったため、ベランダ部分と室内は別撮りしているんです。



(c)2021『花束みたいな恋をした』製作委員会


Q:そうだったんですね!


土井:ベランダ部分は、多摩川が見える建物の屋上にセットを組んで、ロケ撮影しました。室内に関しては、スタジオ内にセットを組みましたね。室内のデザインについては、リアリズムを重視しつつも、観ている方が「あ、いいな。住んでみたいな」と思えるようにしたかったので、それもあって自由度が高いセット撮影を選んだんです。


Q:先ほどの「固有名詞に満ちた物語」の部分、もう少し伺えればと思います。劇中でも『毛皮のヴィーナス』(13)や『希望のかなた』(17)、『牯嶺街少年殺人事件』(91)など、映画のタイトルを発見する楽しみがありますね。『希望のかなた』に関しては、渋谷のユーロスペースが出てきてシビれました。


土井:映画の半券をしおりにする、というシーンでは、「麦は『毛皮のヴィーナス』」「絹は『自由が丘で』(14)」と指定がありました。この部分に限らず、基本的に映画内でちゃんと認識できるものに関しては、脚本段階で明記されています*。


*編注:このあたりの具体的な作品名については、『花束みたいな恋をした』オリジナルシナリオ(リトルモア刊)でも確認できる。




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