ヒッチコックに潜むコントの要素
Q:『ユニットバスの2人』はヒッチコックの『 私は告白する』(53)という作品を思いだしました。殺人を犯した男が神父に告白するんですが、神父は、そのことを誰にも言えない。すると殺人犯の男がどんどん高飛車になって神父を追い詰めていくストーリーなんです。
岩崎:面白いですね。それは笑いの構造ですね。
Q:ヒッチコックはサスペンスですが、岩崎さんの脚本は、その構造を裏側から見て、笑いとして捉え直したものだと感じました。
岩崎:サスペンスは、見るのは好きですけど、特に好んでいるっていうわけでもないんです。でも『ユニットバスの2人』は絶対サスペンスだと思いますね。
あと、僕はお笑いの中にも必ず怖い要素を入れるっていうのはありますね。お笑いなのに怖いって、馬鹿馬鹿しさに繋がる部分があって、それで怖い話が好きなんですけど。
Q:かもめんたるの「白い靴下」というコントがありますが、あれはすごく怖いですよね。岩崎さん演じる人物がだんだん「この人本当にやばいんじゃないか」って、怖くなってくる。
岩崎:「人間らしさ」を表現したいっていうことかもしれないですね。光が当たる部分があれば影もある、それが自然と言うか、絶対そうだと思うので。
「ニコニコしていればストレスが溜まることもあるでしょう」とか。みんなそうなんだから、それをもっとオープンにしていけば面白いんじゃないか、みたいな感覚があるんですよね。
Q:今回、ご自分書かれた2作品を比べてみていかがですか?
岩崎:2作品とも本当にすごく好きですね。『切れない電話』には出演してないので、現場にも行ってないんですが、完成したものを初めて見たら結構笑えましたね。
自分が脚本を書いたものでも、あがりを見て、「えー」っていう作品も過去にはあるんですよ。「こうなる?」っていうことがあったりするんですけど、今回は「面白い演出だな」と思えたりして。
Q:これをきっかけに、監督にも挑戦したいという気持ちはありますか?
岩崎:もちろん監督もやってみたいんですけどね。でも演劇に比べてやっぱり映像ってすごい速さで現場が進んでいくじゃないですか。
セリフとかも、本当に監督が思うように役者は言えてるのかなっていう感じで進んでいく。僕が監督やったら何回もテイク重ねて、現場が壊れて、僕がカメラマンに殴られて、とかなっちゃうのかなって不安が(笑)。
Q:(笑)それはそれで、コントっぽいですね。
脚本・出演:岩崎う大(かもめんたる)
早稲田大学政治経済学部卒業。在籍時に所属していたお笑いサークルのメンバー5人でコントグループWAGEを結成しデビュー。WAGE活動休止後に槙尾とコンビ「劇団イワサキマキオ」結成。「かもめんたる」に改名後、お笑いLIVEなどで鍛え上げたコントで2013年キングオブコント優勝する。お笑いだけではなくナイロン100℃に出演するなど舞台・役者・脚本・作家・漫画などジャンル問わず、多方面に活動の幅を広げる。自身が主催する【劇団かもめんたる】では2年連続岸田國士戯曲賞にノミネートされ演劇界でも注目されつつある。
取材・文: 稲垣哲也
TVディレクター。マンガや映画のクリエイターの妄執を描くドキュメンタリー企画の実現が個人的テーマ。過去に演出した番組には『劇画ゴッドファーザー マンガに革命を起こした男』(WOWOW)『たけし誕生 オイラの師匠と浅草』(NHK)『師弟物語~人生を変えた出会い~【田中将大×野村克也】』(NHK BSプレミアム)。
Huluオリジナル「THE LIMIT」
【配信】Huluで毎週金曜新エピソード独占配信中
(※通常配信に加え、4KHDR/5.1chでも配信)
【出演】第1話「ネコと井戸」=伊藤沙莉、堺小春、坂東龍汰
第2話「タクシーの女」=門脇⻨、古川琴音
第3話「ユニットバスの2人」=細田善彦、岩崎う大(かもめんたる)
第4話「ベランダ男」=岡山天音
第5話「切れない電話」=泉澤祐希、岩松了、夏子
第6話「高速夜行バス」=浅香航大、木野花
【脚本】玉田真也、岩崎う大、荻上直子