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『ゴジラ』 原点にして異彩を放つ第一作目【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.57】

『ゴジラ』 原点にして異彩を放つ第一作目【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.57】

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巨大さを伝える初登場シーン



 『ゴジラvsコング』の日本公開が今か今かと待たれる中、再びゴジラへの興味が募ってきたので大好きな一作目を見返す。初代『ゴジラ』は後続のシリーズとはだいぶ雰囲気が異なる。まだ怪獣映画というジャンルが確立される前なので、どちらかといえば『キングコング』や『ロスト・ワールド』といった、ゴジラに影響を与えた参照元の特撮作品の仲間という色が強い気がする。当初はニューヨークの摩天楼をよじ登ったコングと同様、ストップモーションアニメによる撮影が検討されていたが、この手法は膨大な時間が必要とされ、最終的に役者が着ぐるみに入って演じることによって、実在しない生物に命を吹き込むことになった。ご存知のようにこの手法により後のあらゆる怪獣が暴れまくることになる。

 

 しかし、『ゴジラ』は着ぐるみによるシーンばかりではない。特に顔がアップになるシーンでは下から手を入れて口を開閉させる、いわゆるハンド・パペット(ギニョールとも)が使われ、咆哮を上げたり、白熱線を吐き出したりという細かい挙動を見せるシーンで活躍している。いずれも印象的なシーンばかりだが、中でも個人的に好きなのは、ゴジラの初登場シーンである。


 近海での相次ぐ漁船沈没や、嵐の中での家屋倒壊などの災害に見舞われていた小笠原諸島の大戸島。古生物学者の山根博士や物理学者の田辺博士をはじめとする調査団が到着し、島民が主張する巨大な生物の痕跡を追っていると、山の向こう側からゴジラの頭がぬうっと現れ、人々はパニックに陥る。混乱の中で山根博士の娘・恵美子が転倒し、彼女はこちらに向かって大きな口を開けて吠えるゴジラを真正面から目撃する。


 これが史上初めてゴジラが人々の前に姿を見せた瞬間である。トゲトゲの背びれを揺らしながら熱線を吐いて東京を火の海にするという、怪獣の典型としてのイメージに比べると地味な初登場シーンかもしれないが、その地味さが生々しい。全身ではなく部分的にしか見えないというところから、人間の視界にはおさまりきらないというスケール感が伝わり、山越しにも関わらず頭が現れるというのも衝撃的だ。劇場でこの場面を初めて観るという体験をしたかったものである。


  ギニョールの造形は着ぐるみのそれとは若干違うのだが、人形的でありながら滑らかに動くところが生き物、というより怪物的だ。そんな異物感のあるやつが白昼の明るい中に現れるというのもかえって不気味である。暗さでごまかすようなことはせず、はっきりとした顔を見せることで、とんでもないものが現れたことを十分に教えてくれるシーンとなっている。





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