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ジョン・ファヴローが贈るホリデー映画『エルフ ~サンタの国からやってきた~』【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.64】

ジョン・ファヴローが贈るホリデー映画『エルフ ~サンタの国からやってきた~』【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.64】

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最後は心温まるのがクリスマスのお約束





 最初は実の父親に会いに行くも変質者扱いされてしまうバディだが(無理もない)、父親ウォルターは確かにバディが遺伝的に息子であると医師に確認を取ると、渋々彼を現在の妻子と暮らす家に迎える。一方バディはデパートのおもちゃ売り場で知り合った女性ジョヴィー(ブロンドのズーイー・デシャネル、誰だかわからなかった!)に惹かれ、いい感じに。仕事ばかりで家族を顧みてこなかったウォルターは、やがてバディの存在を通して息子マイケルと向き合い、最初はニコリともしなかったジョヴィーもバディとの交流により笑顔をつくるようになる。


 そればかりか、ジョヴィーはセントラル・パークに墜落したサンタクロースのソリを飛ばすため、大勢の人々の前で歌声を披露するほどの勇気を持つようになる。クライマックス、NY上空を飛んでいたサンタのソリはエンジンが破損したことで墜落してしまうが、本来ならソリは人々の持つ「クリスマスの心」をエネルギーに飛ぶことができるのだった。ジョヴィーは人々にクリスマスの心を取り戻させ、サンタのソリにエネルギーを送るため「サンタが町にやってくる」を熱唱するのだ。


 1960年代以降(奇しくも『ルドルフ』が放送された頃である……)補助的に取り付けられたというこのエンジン、サンタのソリにロケットのようなエンジンノズルをつけてしまうところに、のちに『アイアンマン』を撮るファヴローらしさを感じずにはおれない。もっと言えばこれがのちのマンダロリアンのジェットパックにさえ通じるのかもしれない。


 ジョヴィーの歌に、ウォルターたち一家をはじめその場にいる人々が合わせて歌い出し、大合唱になるシーンはじーんとせずにはいられない。その間もバディはソリのエンジンを直し、サンタを助けようとする。エルフの世界にも人間の世界にも馴染めそうになかったバディが、サンタの手伝いをするというエルフの天職を全うするばかりか、人々の心を変え、NYにクリスマスをもたらす。ベタな展開だが、そういうのが一番美しくスマートだと思う。なにより最後にはほっこり温まるのがクリスマス映画のお約束なのである。


 コメディ要素、ファンタジー要素、どれもよく出来ていて、クリスマス映画として綺麗にまとまっている。ここからステップを踏んで『アイアンマン』から果ては『ライオン・キング』まで監督するようになることを考えれば、ジョン・ファヴローのフィルモグラフィとして欠かせない作品と言えるだろう。全てにおいてバランスの取れた、まさにファヴローによるホリデー・スペシャルな一本である。



イラスト・文:川原瑞丸

1991年生まれ。イラストレーター。雑誌や書籍の装画・挿絵のほかに映画や本のイラストコラムなど。

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