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ジョン・ファヴローが贈るホリデー映画『エルフ ~サンタの国からやってきた~』【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.64】

ジョン・ファヴローが贈るホリデー映画『エルフ ~サンタの国からやってきた~』【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.64】

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クリスマス特番へのリスペクトと細部へのこだわり





 異邦者のNY訪問ものであると同時に、全体のまとめ方はいわゆるクリスマス特番のような雰囲気だ。ボブ・ニューハートが演じるバディの養父がホストとして語り出すところから始まり、北極世界を彩るストップモーションアニメは、ランキン・バスのクリスマス特番『ルドルフ 赤鼻のトナカイ』へのリスペクトに満ちており、人形アニメ好きとしても引き込まれる出来になっている。


 ストップモーションアニメのパートに登場する雪だるまのレオンというキャラクター、なにか見覚えがあるかと思えば『ルドルフ』に登場する雪だるまのサムにそっくりである。レオンに声を当てているのはレオン・レッドボーンという歌手で、格好もちょうどこういう帽子にサングラス、ステッキを持っているらしく、名前だけでなく全体的に当て書きのようだ(ついでに言えば「LEON」は逆さに読むと「NOEL」になる)。またバディの緑色の衣装も、『ルドルフ』に登場するエルフが着ていたものと同じで、サンタの手伝いをするエルフとして典型的なイメージとは言え、全体的に本作のエルフたちの衣装は、『ルドルフ』由来のデザインとなっているようだ。


 一見適当な造形をした北極の動物たちも、なかなかかわいいのだが、セイウチとパフィン、イッカクの声を監督のジョン・ファヴローが(ファヴローはNYのシーンでも出演している)、シロクマの声をなんとストップモーション特撮の巨匠レイ・ハリーハウゼンが当てているという細かさ。ふざけているようで古典への愛が真っ直ぐなところが素晴らしい。こだわりやリスペクトが全体に説得力を持たせ、コメディを描く舞台としての強度が保たれているというわけだ。当然だがコメディはただふざけるだけでは作れないのだ。


 サンタの工房などの内装は白を基調としていて、まるで絵本の線画の背景のようだが、その工房で作られているのが『トイ・ストーリー』でもお馴染みのミスター・ポテトヘッドやエッチ・ア・スケッチなど大手メーカー商品というのだから笑える(リストにはバービー人形なども書かれている)。そんなに世界中にエッチ・ア・スケッチ欲しがる子どもがいるのかよとツッコみたくなる(以後、このお絵描きおもちゃはNYのシーンにも多数登場するが、バディはこれを使って綺麗にレタリングされた文章やモナ・リザの模写を描いてしまう)。

  

 こういう場合に登場しがちな無印のぼんやりしたおもちゃではなく、実在のメーカーものを登場させるところもまた、おとぎ話の世界にディテールを与えていると言えるだろう。おもちゃのチョイスがややチープなところも、いいセンスである。




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