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『裸足で鳴らしてみせろ』工藤梨穂監督 冒険の映画を撮り続けたい【Director’s Interview Vol.229】

『裸足で鳴らしてみせろ』工藤梨穂監督 冒険の映画を撮り続けたい【Director’s Interview Vol.229】

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動きで見せる感情の移ろい



Q:『オーファンズ・ブルース』のときもそうでしたが、今回もバックショットが印象的でした。


工藤:背中に関しては『オーファンズ・ブルース』の時ほどの意識はなかったのですが、撮影の途中で「なんか背中多いですね」って佐々木さんからは言われました(笑)。無意識な部分もあると思いますが、表情を捉えるよりも背中の方がより感情が出るなという感覚が自分の中にあるんです。それでバックショットを選ぶことが多いのかもしれません。


Q:画の中の立ち位置で人間関係を示唆しているようなショットも色々あったと思います。特に、目が見えない美鳥と直己が話している時に、実は横に(海外に行っているはずの)槙もいるというショットの位置関係は見事でした。


工藤:『永遠の僕たち』(11)という映画のシーンの中で、幽霊の加瀬亮さんが立っていて、その横でミア・ワシコウスカとヘンリー・ホッパーがベンチに腰掛けて話しているシーンがあるのですが、その雰囲気に似てるねと佐々木さんが言ってくれたんです。ですから、人物の立ち位置はそれを参考にしましたね。


Q:演技指導に関しては具体的にどう演出をされているのでしょうか。


工藤:仕草や細かい動きを指示することは多いのですが、感情に関してはあまり指示しません。むしろそこはいうべきじゃないかなと。感情は実際に演じる人の領域だと思うので、私はそれがどう映っているかを見て外側の部分の具体を指示していく感じです。とは言え、特に主演の方とは現場に入る前にたくさん話して、作品のことを共有する時間が自分の制作には欠かせません。

 


『裸足で鳴らしてみせろ』(C)2021 PFFパートナーズ(ぴあ、ホリプロ、日活)/一般社団法人PFF


Q:直己と槙の格闘は本作の重要なポイントだったかと思います。どのように演出されましたか。 

 

工藤:この映画における格闘は相手に触れるための行為です。万人が「これは愛だ」と感じる行為、触れ方では語れない愛もきっとこの世界のどこかにあるはずだと思ったし、私が撮るならばそれを捉えたいと思いました。それでも、二人の絆を唯一無二にしてきた格闘が同時に二人を苦しめるものにもなってしまうという矛盾を、愛のままならなさを描こうとしました。芝居の演出としては、格闘がどんどん濃密に変化していく様とその中での二人の感情の移ろいを見せたいと思っていました。


最初はじゃれ合いだったものが、だんだんエロティックになり最終的には暴力になってしまう。格闘シーンは5つぐらいあるのですが、アクション監督の園村さんと二人にそれぞれのシーンのテーマを伝えてやってもらいました。


Q:格闘シーンはアクション監督も入るほど本格的にやられたのですね。 


工藤:そうですね。脚本を書いている段階から、これはちょっと素人では振り付け出来ない動きだなと思っていました。動きに関しては園村さんが私の考えたテーマに沿って振り付けをしてくださり、その場所を生かしたようなアクションも考えてくれました。





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