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『Zola ゾラ』ジャニクサ・ブラヴォー監督 ポップな表現に込めた意図とは【Director’s Interview Vol.235】
誰の発言を信じるのか?
Q:映画の途中でゾラからステファニに視点が入れ替わります。この視点がとても差別的でひどい内容になっていますが、一方でとても分かりやすい表現でした。
ブラヴォー:この話がツイッターに投稿された時は、私や友人たちの間でもすごく盛り上がりました。私もツイートを読んですぐに映像化したいと思ったくらいだったので、世間の反応はどういうものだろうと、CNNやガーディアンなど大手媒体も調べてみました。するとそこには驚くことが二つあったんです。一つは19歳であるゾラの年齢がなぜか26歳になっていたこと。そしてもう一つは「果たしてこの話は事実なのか?」と疑った記事が出ていたことでした。
『Zola ゾラ』© 2021 Bird of Paradise. All Rights Reserved
私がこのツイートを読んで思ったのは、「若い女性の主体性」「性的な人身売買」この二つについて考えることでした。でも大手媒体では話がそちらにいかず、まずは年齢や内容を疑ってかかっている。これは、非白人女性の発言は信頼されないということがよくわかる例ですよね。ここにはアメリカにおける根深い人種問題も関わっている。実際のステファニやデレクも、この事件を自分たちなりに発信しているのですが、「自分で語り直すと自分がいいように語られる」という典型で、彼ら自身が主人公になっていた。誰の発言を信じるのか?そこにバイアスはかかっていないのか?このことを映画の中で表現したかった。それでステファニ側の意見も出すことが必要だと感じたんです。
また、あのシーンはタイミング的にも重要でした。ペニスの強烈なモンタージュがあり、その後ステファ二が多くの半裸の男たちに囲まれる。観ている人は多分、この先最悪なことが起こると想像してしまうことでしょう。だからあえてそこに天使をぶつけるような形で、あのシーンをインサートすることを思いついたんです。