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『カモン カモン』マイク・ミルズ監督を形作る“他者への愛情” 【Director’s Interview Vol.200】

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『カモン カモン』マイク・ミルズ監督を形作る“他者への愛情” 【Director’s Interview Vol.200】

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イラストレーター、グラフィックデザイナー、映画監督……。様々な顔を持つマルチアーティスト、マイク・ミルズ。『20センチュリー・ウーマン』(16)以来、約5年ぶりの長編監督作『カモン カモン』が4月22日に劇場公開を迎える。


長編デビュー作『サムサッカー』(05)から『マイク・ミルズのうつの話』(07)、『人生はビギナーズ』(10)、そして『20センチュリー・ウーマン』と『カモン カモン』。ミルズ作品の共通項は、美的センスあふれる映像マジックはもちろん、ナイーブな心情描写にあるだろう。他者に胸の内を打ち明ける怖さ、言い知れぬ不安、消えることのない寂しさ――。感情の微かな揺らぎを丁寧に掬い取るミルズ監督の特長は、最新作『カモン カモン』でよりドラマティックな進化を遂げた。


9歳の甥ジェシー(ウディ・ノーマン)を突然預かることになったジャーナリストのジョニー(ホアキン・フェニックス)。奇妙な共同生活の中でお互いの心境に変化が生じ、少しずつ愛情が芽生えてゆく。フェニックスとノーマンが体現する見事な成長のプロセスに加え、伯父と甥の対話のドラマの合間には、実在の子どもたちに取材したインタビューが挿入されている。現実から派生したフィクションと記録をオーバーラップさせるミルズ監督の“らしさ”がさらにアップデートされた印象だ。


モノクロで紡がれる、対話の愛おしさ。他者への敬愛に満ちた傑作を作り上げたマイク・ミルズ監督にオンラインインタビュー。作品の空気感そのままに、慈愛あふれる語り口で紡がれた制作秘話をお届けする。


Index


映画は自分にとって最も個人的な表現手法



Q:僕自身、マイク・ミルズ監督の映画に何度も救われ続けてきたのですが、本作も含めたミルズ監督の作品には、自分の中の寂しさと他者への優しさが共存しているように感じます。ご自身が映画作りの中で核としている感情には、どのようなものがありますか?


ミルズ:感情というとなかなか一言では言い表せないのですが、僕は他の人々を理解したい・繋がりたいという欲望を基に映画を作り続けてきました。過去の3作品では、僕の身内であり愛している人々をテーマにしていますが、それぞれを大切に思う気持ち、愛情、尊厳が核になっていると思います。


Q:ミルズ監督はたくさんの表現方法をお持ちですが、その中でも映画は最もパーソナルな位置づけといえるのでしょうか。


ミルズ:それはあると思います。映画は表現できる“幅”が広く、かつ様々な“道具”を使えるので人々の感情や内面を表現しやすいんです。僕は『人生はビギナーズ』で父、『20センチュリー・ウーマン』で母、『カモン カモン』で子どもを描いてきましたし、おっしゃる通り自分にとっては最もパーソナルな“画”を描ける手法ですね。



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Q:となると非常に気になるのは、映画は他者との共同作業で作っていくもの、という部分です。ご自身のパーソナルな感情や内在するイメージをどのようにスタッフやキャストの方々と共有し、作品を作り上げていくのでしょう。


ミルズ:映画制作におけるコミュニケーションの取り方は結構複雑で、役者、撮影監督、プロデューサー……それぞれに説明の仕方が異なります。そのため、とにかく時間をかけて忍耐強く、かつ慎重に自分のアイデアを伝えていきます。そういう意味で、僕の仕事の仕方はある意味日本的といえるかもしれませんね(笑)。


ただ、最も大切なのは自分の個人的な感情や経験は、あくまで“種”だということ。そこからさまざまな方とのコミュニケーションを経ていくことで、発芽して育っていく。ひょっとしたらその枝葉は、当初想定していたものとは違う形になっているかもしれない。ただ、コラボレーションによって生まれたものは、想像していたより美しいものになっている場合も往々にしてあるのです。




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