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『カモン カモン』マイク・ミルズ監督を形作る“他者への愛情” 【Director’s Interview Vol.200】

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『カモン カモン』マイク・ミルズ監督を形作る“他者への愛情” 【Director’s Interview Vol.200】

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スパイク・ジョーンズが教えてくれた、ホアキン・フェニックスの流儀



Q:『カモン カモン』はまさに、他者とコラボレートすることで相乗効果が生まれてくる作品だったかと思います。対話による変化・成長の美しさが描かれていましたが、ミルズ監督ご自身は対話の重要性をどのように捉えていますか?


ミルズ:現場における対話でいうと、本当に千差万別だなと感じます。僕と子どもの実際の関係性や経験談を聞きたがる人もいますし、自分の話ばかりする人もいる(笑)。具体的なイメージを直接教えてほしい、と言う人もいますね。


同じシーンを演じている役者でも、一人ずつ説明の仕方は異なってきますし、その違いを理解することが監督の仕事だと僕は思います。一人ずつと向き合って、知って、理解しながら対話をしていく。僕はその過程がとても好きです。


役者というのは、こちらが与えたものによって出してくるものが大きく変化すると感じます。そのため、あえてこちらが欠点や弱みを見せることで、彼らが逆に強みを出してくる――それぞれの良さを引き出せる気はしますね。


たとえばホアキン(・フェニックス)だったら、こちらがちょっとふざけた側面を出すことでより自分をさらけ出せる、というタイプの役者だと思います。そのためお互いにそういった感じで働きかけていきました。撮影中にも僕がちょっとふざけることで、彼自身も恥じることなく「もっとオープンになっていいんだ」と思えて、それが演技に表れてくる。そういった「心を開く」部分は、映画を通して観客の皆さんにも同じように感じていただけるのではないかなと思います。



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Q:ミルズ監督はスパイク・ジョーンズ監督とも知己の仲かと思います。『her/世界でひとつの彼女』(13)でホアキン・フェニックスと組んだジョーンズ監督に、何かアドバイスを受けたりはしたのでしょうか。


ミルズ:はい、アドバイスを受けました。ホアキンに「イエス」と言ってもらうのは、実はすごく難しいんです。まず脚本を書いて、いま僕が(このオンランインインタビューをして)いるこの部屋で何度も繰り返し読み合わせをしたんですが、なかなか首を縦に振ってくれなくて。「これはひょっとして僕自身が嫌われているんじゃないか……」と不安になり、スパイクに電話して「なんで全然イエスって言ってくれないんだろう」と相談したんです。そうしたら「大丈夫、僕も全く同じことをされたから」って(笑)。


きっとそれが、ホアキンが出演する際のプロセスなんでしょうね。出演することで、彼の人生や生活、精神面に大きく影響してくるでしょうから。「ホアキンはすごく考えて役を決めているんだよ」とスパイクに言われて、「自分の問題じゃなかった……」とちょっとホッとしました(笑)。




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