原作をヤンキー映画として噛み砕く
Q:前田司郎さんとは『横道世之介』(13)以来のタッグです。今回も共同脚本と言う形ですが、作業はどのように進められたのでしょうか。
沖田:『横道世之介』のときは前田が3稿ぐらいまで書いて「あとは好きにやってくれ」と渡されました。今回は、ミー坊の話を中心にするなど前田が原型を作ってくれたこともあり、「原作:前田司郎」ぐらいの感覚でした。そのすごく長い原作を、僕が今の形に書き直しました。でも前田が最初に作った部分も多いですよ。ヤンキーたちのエピソードなどは前田が書いているんです。
Q:ヤンキーのエピソードは、エッセイにはあったのですか?
沖田:ないですね(笑)。でもその辺は意外とちゃんと考えて組み込んでいます。さかなクンのエッセイでいじめについて書かれた有名なものがあって、いじめられっ子とさかなクンが一緒に釣りに行って、その子の心が少し和らいだ話があるのですが、それをやろうとしてあの形になりました。ヤンキーや不良ってある意味では生き辛い人たちだから、そういう人たちの心を釣りを通してほぐしていく。だから僕たちなりに、あのエッセイのテーマをヤンキー映画として噛み砕いたんです。
『さかなのこ』©2022「さかなのこ」製作委員会
Q:沖田監督と前田さんは中学高校の同級生なんですね。
沖田:前田とはサッカー部で出会いました。その後、アメリカのアカデミー賞を獲るための部活を彼と一緒に高校で作ったのですが、すぐ潰れました(笑)。
Q:その部では映画を撮っていたのですか。
沖田:最初は作ろうと思っていたのですが、前田はその頃から演劇をやりたがっていて、僕は映画をやりたかった。まずそこで相違もあり、結局作っていません。また、実際にその部を作ったら、どこの部にも入りたくない人たちがいっぱい集まっちゃって(笑)、顧問の先生もついてくれたのですが、僕がサッカー部に入りたくなって「俺やっぱりサッカー部入るわ」って。それでそのまま潰れちゃいました(笑)。