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『さかなのこ』沖田修一監督 自分たちが楽しんでいる部分を観ている人が楽しんでくれたら【Director’s Interview Vol.236】

『さかなのこ』沖田修一監督 自分たちが楽しんでいる部分を観ている人が楽しんでくれたら【Director’s Interview Vol.236】

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脚本から広がる部分



Q:今回はヤンキーとのやりとり部分がとても好きで、バタフライナイフの件などは最高でした。セリフやシチュエーションなど、基本は脚本どおりなのでしょうか?

 

沖田:基本は脚本どおりです。ですが、そのときの流れでフッと湧き出た言葉や仕草など、そういうものは面白いから取り込みます。そうやって現場で出るアイデアには耳を傾けますね。脚本を書いたときとは違う面白さが現場で見つかることもあるので、それは撮ってみようと。ただ、やり過ぎだったかなと後から思うこともあるので、その辺のさじ加減は難しいですね。


Q:役者の皆さんからは、そうやってアイデアが出てくることが多いのでしょうか。


沖田:そうですね。のんさんも色々と考えて来たと思います。今回は本読みの時間があったので、ヤンキー役の皆さんに集まってもらって「いかに生ぬるいヤンキーか」調整することが出来ました(笑)。音楽をかけて「このぐらい平和なヤンキーのイメージかな」とか言いながら、俳優の皆さんに今回の狙いを共有できましたね。


Q:先ほど「やり過ぎだったかな」という言葉がありましたが、その「やり過ぎた部分」は編集などで監督が調整されているのでしょうか。


沖田:調整はしますが、脚本から広がる部分はいつもあるんです。それは俳優だけでなく場所もそう、ロケハンのときに見つけたものを取り入れたりして、実際の場所や人で脚本から外れていくことはよくあります。スタッフも俳優も基本は脚本を大事にしてくれますが、その場でアイデアが出てくると皆ワクワクしてくる。それが楽しいんですよね。



『さかなのこ』©2022「さかなのこ」製作委員会


Q:そういえば、今回は監督ご自身も出演されていました。


沖田:あれはタコのシーンの撮影があまりに大変過ぎて、魂が抜けたようにボーッとしちゃったのですが、そのときに「沖田さん、これは記念に出演しといた方がいいよ」とスタッフから言われたんです。それで急遽出ることになりました。本当にタコが大変すぎて、あのときは心がどこかにいってましたね(笑)。あのB級ホラーみたいなタコは、引き剥がし用や内臓とる用など色んなバージョンを3体も用意していて、すごいお金をかけて作ったわりには重すぎて持てなかったりしたんです。


Q:柳楽優弥さん演じるヒヨのネクタイなど、細かいディテールの面白さもたくさんありました。


沖田:ネクタイが風で揺らいでいる感じをやりたかったのですが、「だったら固めといたらどうですか?」とスタッフに言われ、それで固めて臨んだら撮影当日は台風並みに強い風が吹いた。結局固めなくても良かったのですが、せっかくだし「いいよ、やってしまおう」って。さすがにあのネクタイは周りから心配されました(笑)。悪ノリな部分ではあります。


Q:観てる方は悪ノリとは感じず楽しませてもらっていますが、その辺のディテールは脚本の段階で決まっているのでしょうか、それとも現場で考えられているのでしょうか。


沖田:両方あります。脚本通りのこともあるし、準備の段階で出てくるアイデアもある。俳優さんが出してくれたアイデアをうまく活かせたりすると嬉しいですね。皆さん「沖田の映画だから」って、そういう気分でやってくれている部分も大きいと思います。自分たちが楽しんでいる部分を、観てる人が楽しんでくれたらそれが一番良いなと。楽しい映画にしたいと思ってるだけなんですけどね(笑)。


Q:楽しくやっている感じはすごく伝わります。現場で起こることを沖田さんがうまく吸収されているのでしょうね。


沖田:子供の頃、映画もどきみたいなものを前田と一緒に作って遊んでたんです。そうやってビデオカメラで遊ぶ発想があって今の仕事につながっているので、もしかしたらその感覚が抜けきれてないのかもしれない(笑)。その遊びの感じが原体験としてあるので、今の現場でもそうなりたいのかもしれません。




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