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『犬も食わねどチャーリーは笑う』市井昌秀監督 夫婦って結局わからない【Director’s Interview Vol.240】

『犬も食わねどチャーリーは笑う』市井昌秀監督 夫婦って結局わからない【Director’s Interview Vol.240】

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倦怠期の夫婦バトルを描いたコメディ。と言ってしまうと既視感を拭えないが、『犬も食わねどチャーリーは笑う』はそんな心配を吹き飛ばすほどに面白く、しかも完成度が非常に高い。脚本、ストーリーテリング、カット割り、カメラワーク、編集、そして映画的カタルシスと、あらゆることに徹底的にこだわった演出がスクリーンから溢れだす。主演した香取慎吾の新たな魅力も全開で、共演する岸井ゆきのや他の役者陣もバッチリハマっている。監督した市井昌秀の勢いにはただただ驚くばかりだ。そんな市井監督に本作の製作について話を伺った。



『犬も食わねどチャーリーは笑う』あらすじ

この物語の主人公、裕次郎と日和は結婚4年目の仲良し夫婦? というのは(もちろん)表向き。鈍感夫にイライラする日和は、積もりに積もった鬱憤を吐き出さなきゃやってらんないわー! と、出会ってしまったのは、SNSの〈旦那デスノート〉。そこには妻たちの恐ろしい? 本音、旦那たちが見たらゾッとするようなエグイ投稿がびっしり書き込まれていた。そしてある日、裕次郎もその存在を知ってしまう!「これって俺のことか?」気になる投稿のペンネームはチャーリー。日和と一緒に飼っているフクロウの名前もチャーリー…ってことは! 夫婦ゲンカのゴングの鐘が、いま鳴り響く!!


Index


夫婦って結局わからない



Q:夫婦の話を映画にするという発想の原点はどこにあったのでしょうか。 

 

市井:今から14年くらい前、自主映画を作ろうと夫婦の物語を書いていました。当時の僕は結婚したばかりでしたが、それから時が経ち僕ら夫婦の中にも紆余曲折があった。昨日までは楽しく暮らしていたのに、翌日には離婚届を出すぐらいの勢いでケンカしてしまったりと、そういうことを振り返って、改めて「夫婦」というものをまた書いてみたいと思ったんです。


そんなときに「だんなデスノート」の存在を知りました。最初は本で読んだのですが、デスノートの内容って誰かに見せる前提で書いているのでユーモアも結構差し込まれていて、本当にシリアスな状況にある夫婦は実はここには書いてないのではと、やや穿った見方をしてしまいました。でも実はそこの乖離が物語になるのではと思い、デスノートをきっかけにした話を考え始めたんです。



『犬も食わねどチャーリーは笑う』©2022“犬も食わねどチャーリーは笑う”FILM PARTNERS 


Q:「これは映画になるぞ」という確信があったのでしょうか。


市井:正直言うと不安もありました。「夫婦」という関係性がすでに出来上がっている人物を描くのは、久しぶりでしたし、本当は「ボーイ・ミーツ・ガール」的なことの方が映画にしやすい。ただその頃は「夫婦って結局わからないもの」という思いもあり、その分からなさや複雑さに挑戦してみたかったんです。


Q:脚本協力として2名の女性の名前がありましたが、脚本はどのように進められたのでしょうか。

 

市井:その2名のうち一人は私の妻で、もう一人は知り合いの離婚経験者です。離婚の後は面倒くさい手続きがあるなど、そういった詳細をその方から伺ったりしました。また、デスノートの文言は僕が書いていますが、その二人にみてもらった上で書き直しています。キャラクターに関しては、余貴美子さん演じる蓑山や井之脇海さん演じる若槻のような人や、田村健太郎さん演じる出版社の塚越のように結婚自体に懐疑的な人など、わりと身近にいたのでそれを参考にしましたが、僕自身の分身として投影したところも強くあります。





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